茶蕎麦

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少女は星にならない

十話 奇跡で星は浮かばない

雨露零して、空は泣く。ごろりごろりと稲光の音色轟かせ、暗く、黒く天はどうにも鬱いでいた。 今日はずっと突き抜けるような青を望んでいたのに、しかしおおよその予報とも異なり天気は大雨となっている。 いくら待っても数多の水の軌跡滞らない眼前。果た...
少女は星にならない

九話 かいぶつに挑むのが勇者だけでいいのか

かいぶつは誅されるもの。 物語ではよくそう描かれるけれども、福路美穂子はそう思わなかった。 大きいからって邪魔者扱いしてしまうのは辛いことだし、理解できないからって除いてしまうなんてとても悲しい。 せっかくだから、《《どうしようもないもの》...
少女は星にならない

八話 それが一夜の夢ならば

好きという言葉がある。 それは、おとうさんおかあさん好き好きと騒ぐ私に、みだりに使ってはいけないと注意された思い出が強い、そんな文句だ。 そういうものは、もっと多くを知ってから使いなさい、と仏頂面を少し緩めながら父は語る。 好きというのは本...
少女は星にならない

七話 愛は喪われず/星は望まれてそこにある

愛/哀はそう簡単には止まらない。止まってくれない。 「……咲」 「お姉ちゃん……」 宮永照と宮永咲。紆余曲折は、本音を聞いて考え改めた姉が謝ることで終わりを迎えた。 姉妹二人が涙を流し、心重なり合ったことを喜んだ一幕。華二輪がもとの花瓶に仲...
少女は星にならない

六話 たとえそこが青空でなかったとしても

二つの高い背中の後をおずおずと、華の少女は付いていく。 長身二人が人混みを掻き分けて進む中を、宮永咲は頼もしく思いながら、同時に遠慮なく右に左に進む経路をとても覚えきれずに不安に感じもした。 これもし置いていかれたら私東京のど真ん中で右も左...
少女は星にならない

五話 デカい安心毛布はカップリング成立の夢を見る

その雛は、羽ばたく。空へと向かって。 しかし、何度だって地に落ちるだろう、飛ぶのにその羽根は小さ過ぎるから。 けれども止めはしない。だって、既にインプリンティングされていたのだから。 私の大好きなあの人は飛ぶんだ。だから、私も飛べるはず。 ...
少女は星にならない

四話 泡の手のひらは水月を拾う

光線弱々しく変遷しながら遠ざかる茜色。紫色に落ち込んで夜に消えゆく陽光を望みながら、少女は思う。再び明日が来るという道理への不安を。 また明日。そんな約束を果たせず両親は没した。ならば、かもしたら太陽すらも。光は儚く、脆い。 「いやだ……」...
少女は星にならない

三話 織姫は十五光年先の彼の姿を見つめる

長野といっても、決して山ばかりではない。街もあれば、野もある。車も通れば、花も咲く。 だがしかし、そんな人と自然のバランスなんて知らないとでもいうかのように、京太郎の父親の実家の周囲は山だった。 山の谷の、限界集落。自然、須賀一家は車での通...
少女は星にならない

二話 風が本を捲らないから

宮永照は読書が好きである。 文字となって出力された物語の数々は、本当だろうが嘘だろうが心を大いに刺激する。 徐々に顕になってくるその内容の愉快も憂いも現実を変えるほどの力はないのかもしれないが、しかしだからこそ良かったのだった。 恋しいほど...
少女は星にならない

一話 サモトラケのニケの美は翼にあるのか

大星淡は、星星が好きだ。 太陽はおっきくてあったかいし、月は満ち欠けが綺麗。地球だって、とても大切な私達の世界だってことも分かっている。 しかし、夜空というカンバスに思うがままに光を散らしたかのように細々とした星星一粒一粒こそが、淡にとって...
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