少女は星にならない

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十六話 太陽/あなただけを見ていれば間違いないから

神代小蒔は、空には太陽以外に要らないと言い切れる人である。月はあまりに冷たい色をしていて、星星は暖を取るにはあまりに微か。ならば、ついうとうとしてしまいたくなるくらいのお天道様こそ大事に、想い思って愛していた。「私は――星に願いません」遍く...
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十五話 天泣く程に恋しくて

たとえ雨に心地が乱れたとしても、失くしてこの世は恵まれない。ただ気圧によるものか時に頭がずくんと痛む。思わず庭の先に巌を望めどそこに救いなどはなく。そんな私事を気にするのはらしくないと彼女は思えども、それでも視線は度々空へ向いた。雨粒を幾つ...
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十四話 空を飛ぶのには身軽な方が良いのだけれど

辻垣内智葉は、臨海女子麻雀部の部長である。そんな智葉は、常日頃それらしく部内の様子を見渡すことを癖としていた。もとよりその気風の良さと貫禄、そしてとある事情から学校の外ではお嬢とすら呼ばれる彼女。カチャカチャうるさい部室内に都度鋭く目を配る...
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十三話 幾ら想いを焚けども独りには

須賀京太郎は、元来星に手を伸ばす人だった。希望を持ち、愛に瞳を輝かし、そして夢を求めてやまない少年が彼の基礎。その大器が幾ら愛のために陳腐化しようとも、怪我の痛苦にて肩より上に手が上がらなくなろうとも、本質的に青年は足掻く者なのだ。更に言う...
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十二話 たとえ水をあげなくても、その花は

白糸台高校は私立であり、また所謂《《いいところ》》の子女が多く通う学校としてそれなりに有名だ。とはいえ、昔はいざ知らず現在には親に所以した派閥や垣根などは殆どなく、強いて言うならば少しお硬い雰囲気がある程度の普通の高校だ。ただ、東京にあって...
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十一話 だから少年はその広い器を水に浸す

須賀家は、大家である。それは金持ちであるというだけの理由ではない。遡ることの出来るだけで千年を超えるその積み上げてきた歴史、国に波及した影響力の高さから多くからそう認知されている。だが、関東の大震等によって経済的な力は随分と衰え、地盤を変え...
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十話 奇跡で星は浮かばない

雨露零して、空は泣く。ごろりごろりと稲光の音色轟かせ、暗く、黒く天はどうにも鬱いでいた。今日はずっと突き抜けるような青を望んでいたのに、しかしおおよその予報とも異なり天気は大雨となっている。いくら待っても数多の水の軌跡滞らない眼前。果たして...
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九話 かいぶつに挑むのが勇者だけでいいのか

かいぶつは誅されるもの。物語ではよくそう描かれるけれども、福路美穂子はそう思わなかった。大きいからって邪魔者扱いしてしまうのは辛いことだし、理解できないからって除いてしまうなんてとても悲しい。せっかくだから、《《どうしようもないもの》》とだ...
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八話 それが一夜の夢ならば

好きという言葉がある。それは、おとうさんおかあさん好き好きと騒ぐ私に、みだりに使ってはいけないと注意された思い出が強い、そんな文句だ。そういうものは、もっと多くを知ってから使いなさい、と仏頂面を少し緩めながら父は語る。好きというのは本当に大...
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七話 愛は喪われず/星は望まれてそこにある

愛/哀はそう簡単には止まらない。止まってくれない。「……咲」「お姉ちゃん……」宮永照と宮永咲。紆余曲折は、本音を聞いて考え改めた姉が謝ることで終わりを迎えた。姉妹二人が涙を流し、心重なり合ったことを喜んだ一幕。華二輪がもとの花瓶に仲良く据わ...
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