少女は星にならない

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少女は星にならない

十五話 天泣く程に恋しくて

たとえ雨に心地が乱れたとしても、失くしてこの世は恵まれない。 ただ気圧によるものか時に頭がずくんと痛む。思わず庭の先に巌を望めどそこに救いなどはなく。 そんな私事を気にするのはらしくないと彼女は思えども、それでも視線は度々空へ向いた。 雨粒...
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十四話 空を飛ぶのには身軽な方が良いのだけれど

辻垣内智葉は、臨海女子麻雀部の部長である。 そんな智葉は、常日頃それらしく部内の様子を見渡すことを癖としていた。 もとよりその気風の良さと貫禄、そしてとある事情から学校の外ではお嬢とすら呼ばれる彼女。 カチャカチャうるさい部室内に都度鋭く目...
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十三話 幾ら想いを焚けども独りには

須賀京太郎は、元来星に手を伸ばす人だった。 希望を持ち、愛に瞳を輝かし、そして夢を求めてやまない少年が彼の基礎。 その大器が幾ら愛のために陳腐化しようとも、怪我の痛苦にて肩より上に手が上がらなくなろうとも、本質的に青年は足掻く者なのだ。 更...
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十二話 たとえ水をあげなくても、その花は

白糸台高校は私立であり、また所謂《《いいところ》》の子女が多く通う学校としてそれなりに有名だ。 とはいえ、昔はいざ知らず現在には親に所以した派閥や垣根などは殆どなく、強いて言うならば少しお硬い雰囲気がある程度の普通の高校だ。 ただ、東京にあ...
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十一話 だから少年はその広い器を水に浸す

須賀家は、大家である。それは金持ちであるというだけの理由ではない。 遡ることの出来るだけで千年を超えるその積み上げてきた歴史、国に波及した影響力の高さから多くからそう認知されている。 だが、関東の大震等によって経済的な力は随分と衰え、地盤を...
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十話 奇跡で星は浮かばない

雨露零して、空は泣く。ごろりごろりと稲光の音色轟かせ、暗く、黒く天はどうにも鬱いでいた。 今日はずっと突き抜けるような青を望んでいたのに、しかしおおよその予報とも異なり天気は大雨となっている。 いくら待っても数多の水の軌跡滞らない眼前。果た...
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九話 かいぶつに挑むのが勇者だけでいいのか

かいぶつは誅されるもの。 物語ではよくそう描かれるけれども、福路美穂子はそう思わなかった。 大きいからって邪魔者扱いしてしまうのは辛いことだし、理解できないからって除いてしまうなんてとても悲しい。 せっかくだから、《《どうしようもないもの》...
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八話 それが一夜の夢ならば

好きという言葉がある。 それは、おとうさんおかあさん好き好きと騒ぐ私に、みだりに使ってはいけないと注意された思い出が強い、そんな文句だ。 そういうものは、もっと多くを知ってから使いなさい、と仏頂面を少し緩めながら父は語る。 好きというのは本...
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七話 愛は喪われず/星は望まれてそこにある

愛/哀はそう簡単には止まらない。止まってくれない。 「……咲」 「お姉ちゃん……」 宮永照と宮永咲。紆余曲折は、本音を聞いて考え改めた姉が謝ることで終わりを迎えた。 姉妹二人が涙を流し、心重なり合ったことを喜んだ一幕。華二輪がもとの花瓶に仲...
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六話 たとえそこが青空でなかったとしても

二つの高い背中の後をおずおずと、華の少女は付いていく。 長身二人が人混みを掻き分けて進む中を、宮永咲は頼もしく思いながら、同時に遠慮なく右に左に進む経路をとても覚えきれずに不安に感じもした。 これもし置いていかれたら私東京のど真ん中で右も左...
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