2023-12

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原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート3 砂金の真心 金沢真弓③

「でも――――あたしはそのうち死んじゃうんだよ?」 はじめての、再会の日。酷く白く薄い少女はそう言った。拙い、と真弓は思う。こんな自棄っぱちな言葉を口にさせてこの子、百合が辛くないわけがないのに。 だが、終わりの空の下少女はどこまで希薄で、...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート3 砂金の真心 金沢真弓②

恒星が光り輝くのは当たり前なのかもしれない。 いやそもそも遮りさえしなければ万物が光輝を帯び得ることを思えば、発光する膨大な熱で大いなるものが自己を宇宙においても可視化してしまうのは何らおかしいことではなかった。 だが、瞬くお空の数多の輝き...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート3 砂金の真心 金沢真弓①

長く寝たきりになっていた少女がある日、起き上がった。 それは、とても奇跡的なことである。 それだけで誰もかもが幸せになる、それはそんなに素敵なことだったのだ。 だがしかし、当の本人である寝たきりであった今は健康そのものである少女、金沢真弓は...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート2 倒木の無常 木ノ下紫陽花③

星の光一つさえあれば、綺麗は決して闇の中に沈まない。長き髪は散り散りに光を反射し、白く淡色の頬は黒と正対して艶を見せる。 そんな風にして日田アヤメは月光浴びて輝かんばかりに見目を夜に晒しながら、しかし心からの苛立ちに歪ませて吐き捨てるように...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート2 倒木の無常 木ノ下紫陽花②

永劫の幽霊、不滅の一枚レイヤ。木ノ下紫陽花は、実のところそのように定義された存在である。 何より静物に似た映像。しかし彼女は幽かにも終わった形であったとしても世界に触れた。だからこその、幽霊。そんな稀など、当然この世に一つきりだった。 だが...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート2 倒木の無常 木ノ下紫陽花①

木ノ下紫陽花という少女は、お化けとして足りないところばかりだった。 尖っていないし、醜くないし、血も溢れていない。むしろ整ったそのままで、ずぶ濡れていた。幽霊、とはいえそれはあまりに人間的だ。 『寒いなあ……』 毎年白磁の肌に白雪が積もって...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート1 熾火の恋人 火膳ふよう④

たとえ二人の心に隙間がなかろうが、物理的な距離が大いに空いているとその関係に影響する場合があった。 人は、基本的には触れ合い擦れ合いに心温めるものであって、それを失すると仄かな程度の愛では心燃し続けるのは存外難しい。 世の恋愛ごとが遠距離に...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート1 熾火の恋人 火膳ふよう③

火膳ふようの父、火膳有樹は昨今管理職という仕事に振り回され続けているサラリーマンである。でっぷりした体格に反して嫌に清潔でこざっぱりとした印象の、しかしどこにでもいるような男性だ。 彼は残業を含めて帰りは遅く、またそもそも彼にとって家は寝起...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート1 熾火の恋人 火膳ふよう②

既に壊れていて、もうすぐ亡くなってしまうことが決まっている、そんな生き物を存分に可愛がるのはどうすればいいのか、そんなこと頭でっかちなふようでなくても悩むことだろう。 透けて見えるほどに薄命。でも、少女はずっと笑顔のままで。 きっと、そんな...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート1 熾火の恋人 火膳ふよう①

愛とは、連綿と親から子に伝えられるべき概念である。温かさ、優しさなどがそこから生まれるものであるとするならば、それは最早生きるに要るものとすら言えた。 けれども、人というものが不定の生き物であるのであれば、外的要因などで失伝という悲しいこと...
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