それでも私は走る

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それでも私は走る

今日も、一緒に走ろ

「ウララ……起きて」「うう……――ちゃん。分かったよお……」柔らかで心地よい、ハスキーボイス。それを何時も明日の朝の楽しみにしながら少女は寝て、起きる。ぴこぴことピンクの耳はすぐ近くの彼女の心音をすら探ろうしているかのように動く。やがてここ...
それでも私は走る

ハリボテのエレジー

――――という少女は一見とてもそれらしい、ウマ娘だ。愛らしい容貌には大きな栗色の瞳がぱっちりと。耳のてっぺんからよく梳かれた髪は、例え海水をまとい二つ別れていようとも目を惹いて離さない。その上で、節々の細さに合わぬ隆々とした筋がむっちりとす...
それでも私は走る

ワガママなの

「ふぅ……」灼熱が、己の中で燃える。走る者たちは夏を大体嫌うもの。辛いは耐えられても熱を堪えるのは難しいから、それも当然なのだろう。「いい、感じっ!」だが、そんな当たり前なんて――――のように突飛なウマ娘には関係ない。踏み込みに視界が揺れる...
それでも私は走る

羽根はなくても

日差しというものは直線的であっても熱に足りなければどこか柔らかだ。しかし、時期によって極まったそれは痛みすら錯覚させるほど力に満ちていた。「暑いな……」夏の候。これまで若さという振り返ってみればひどく頼りないものを用いてそれを乗り越えてきた...
それでも私は走る

走るのが好きだ

「はぁ……はぁ」走るのが好きだ。そんな想いの発端がウマ娘を走るに賭けさせた。――――という少女も、それは同じ。だからこそ、彼女は走る。「たの、しい!」生きるのは急ぐことではなく、一歩一歩を踏みしめて確かに進むことであるのかもしれない。でも、...
それでも私は走る

水無月の空に啼いた

――――がここのところ空元気でずっといることなんて、エルコンドルパサーは当然気付いていた。存外彼女は役者であるようだけれども、しかしエルコンドルパサーとて仮面を被る者である。一枚の奥の少々臆病な内心から覗いてみると――――の笑顔は以前と比べ...
それでも私は走る

こんなに幸せ

ウマ娘達がその速さを競うということは、人が薄氷を渡ることと似ているのかもしれないと、彼は思った。そもそも遅ければ氷の下に堕ちてしまうだろうし、そしてほんのちょっと力を入れすぎただけで氷は脆くも砕け散って足を取られてしまう。最悪没した先に適切...
それでも私は走る

悲鳴をすら

「……美味しいです」一人蕎麦屋のカウンター席に座して、一口いただいて直ぐにそう零したのは碧い目をした栗毛のウマ娘。主人が少女のためにとせいろ蕎麦たっぷりと盛りに盛ったは十人前。だが、彼女にとってそれは腹八分目に収められる程度でしかないのだか...
それでも私は走る

それでも、私は走る

「全治、二ヶ月か……何、してようかな」若葉色の一重の患者着に身を包みながら、少女は先に聞いた医者の言葉を繰り返す。随分と長く気絶していたらしい合間にがっしりと巻かれたギプスを装置で釣り上げられた、そんな身動きろくに取れない大げさな眼前の光景...
それでも私は走る

何を愛したら

皐月賞のその日、サイレンススズカはトレーナー、そしてチームの皆に連れられて応援に来ていた。あまりの歓声に一時耳を畳みながら、彼女は彼女を思う。その応援相手は当然我らがチームスピカにおける新星、スペシャルウィーク。奇しくも同室の、輝かんばかり...
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