茶蕎麦

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霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十八話

魔梨沙が夢幻館から戻り、自宅で傷ついた身体を薬草と休息で回復させていた、その頃。 幻想郷の空遥か高く。何故か一部破られたまま未だに直されていない幽明結界の前にて、多量の幽霊が溢れていた。 その中心にて、踊っている少女が一人。彼女の着物の薄青...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十七話

「花に三春の約ありというけれど……夏秋冬の分まで咲くのは行き過ぎだわー。やっぱりコレは、幽香の仕業かしら」 春が来て、幻想郷は正に花盛り。しかしそれも随分と過剰過ぎるものがあった。 桜が咲くのはいいだろう。満開のそれらは、風に揺られ宙にて春...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十六話

夜闇の中に星々は輝く。吸い込まれるように暗い背景は、遠い星の光を際立たせて、疎らな美しい点描を生む。天球はまるで光と闇が、夜空のキャンバスの中で彩りを競い合っているかのようだ。 しかし、実際は数えきれないほどの星々の輝きが闇に食まれていて、...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十五話

山風冷たく吐息も地面も白く染まる、幻想郷の冬。寒さ深まる中で、更には夜の帳が下りた今となっては、外にて騒ぐものなどねぐらのない妖怪妖精くらいのもの。 人里離れようがそうでなかろうが、大衆の集まる居酒屋などでない限り、人々は家屋の中にて硬く扉...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十四話

「ふぅ。これでお終いですね……」 「お疲れ様ー。イナバ? それとも優曇華? 鈴仙の方がいいかしら?」 「ええと、魔梨沙様……出来るなら私のことは鈴仙と呼んで下さい」 「分かったわー。これからは鈴仙って呼ぶから、あたしのことも様付けは止めてそ...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十三話

蓬莱山輝夜にとって、この永い夜は非常に刺激的だった。それこそ、永遠の魔法をかけて停めてしまいたいくらいに、素晴らしいものと思えてならないものだ。 この夜の始まった頃はそれほどの感慨を抱いていなかったと輝夜は記憶している。来るかもしれない妖怪...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十二話

永遠亭に侵入した魔梨沙は、沢山の妖精たちの歓迎を受け入れつつ、撃つ星弾のように真っ直ぐ先へと急いだ。 そして、魔梨沙が今日のために空間が改造されていたのか長く一直線な廊下を進んでくと、正面を襖扉が邪魔をしたために、そこを開けて先へと進もうと...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十一話

僅かに欠けているとはいえ明るい満月によって、互いの表情すらよく見える中で、蓬莱山輝夜と霧雨魔梨沙は自前の紅の瞳を持って見つめ合う。 魔法使いのイメージそのままの魔梨沙の姿を、千年以上迷いの竹林から外に出ていない輝夜はその統一感から地上の民の...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第三十話

蓬莱人である藤原妹紅は、老いる事も死ぬ事もない程度の能力を持つ存在である。 彼女も人の枠にあるため肉体を持っているが、それが滅びようともその生に関係はなく、蓬莱の薬を飲んで本体と成った魂によって幾らでも肉体を再構築させられるため、結果的に不...
霧雨魔梨沙の幻想郷

第二十九話

迷いの竹林の中、永遠亭の近くを棲家とする妖怪兎達は、大いに騒いでいた。 何時も飛んで跳ねて、時に餅をついたりする、そんな暢気な妖獣たちはそのよく伸びた感覚器によって、強力な妖怪と人間、そして恐ろしい幽霊と半分人間の存在をいち早く知り、怯えた...
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