茶蕎麦

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少女は星にならない

十三話 幾ら想いを焚けども独りには

須賀京太郎は、元来星に手を伸ばす人だった。希望を持ち、愛に瞳を輝かし、そして夢を求めてやまない少年が彼の基礎。その大器が幾ら愛のために陳腐化しようとも、怪我の痛苦にて肩より上に手が上がらなくなろうとも、本質的に青年は足掻く者なのだ。更に言う...
少女は星にならない

十二話 たとえ水をあげなくても、その花は

白糸台高校は私立であり、また所謂《《いいところ》》の子女が多く通う学校としてそれなりに有名だ。とはいえ、昔はいざ知らず現在には親に所以した派閥や垣根などは殆どなく、強いて言うならば少しお硬い雰囲気がある程度の普通の高校だ。ただ、東京にあって...
少女は星にならない

十一話 だから少年はその広い器を水に浸す

須賀家は、大家である。それは金持ちであるというだけの理由ではない。遡ることの出来るだけで千年を超えるその積み上げてきた歴史、国に波及した影響力の高さから多くからそう認知されている。だが、関東の大震等によって経済的な力は随分と衰え、地盤を変え...
少女は星にならない

十話 奇跡で星は浮かばない

雨露零して、空は泣く。ごろりごろりと稲光の音色轟かせ、暗く、黒く天はどうにも鬱いでいた。今日はずっと突き抜けるような青を望んでいたのに、しかしおおよその予報とも異なり天気は大雨となっている。いくら待っても数多の水の軌跡滞らない眼前。果たして...
少女は星にならない

九話 かいぶつに挑むのが勇者だけでいいのか

かいぶつは誅されるもの。物語ではよくそう描かれるけれども、福路美穂子はそう思わなかった。大きいからって邪魔者扱いしてしまうのは辛いことだし、理解できないからって除いてしまうなんてとても悲しい。せっかくだから、《《どうしようもないもの》》とだ...
少女は星にならない

八話 それが一夜の夢ならば

好きという言葉がある。それは、おとうさんおかあさん好き好きと騒ぐ私に、みだりに使ってはいけないと注意された思い出が強い、そんな文句だ。そういうものは、もっと多くを知ってから使いなさい、と仏頂面を少し緩めながら父は語る。好きというのは本当に大...
少女は星にならない

七話 愛は喪われず/星は望まれてそこにある

愛/哀はそう簡単には止まらない。止まってくれない。「……咲」「お姉ちゃん……」宮永照と宮永咲。紆余曲折は、本音を聞いて考え改めた姉が謝ることで終わりを迎えた。姉妹二人が涙を流し、心重なり合ったことを喜んだ一幕。華二輪がもとの花瓶に仲良く据わ...
少女は星にならない

六話 たとえそこが青空でなかったとしても

二つの高い背中の後をおずおずと、華の少女は付いていく。長身二人が人混みを掻き分けて進む中を、宮永咲は頼もしく思いながら、同時に遠慮なく右に左に進む経路をとても覚えきれずに不安に感じもした。これもし置いていかれたら私東京のど真ん中で右も左も分...
少女は星にならない

五話 デカい安心毛布はカップリング成立の夢を見る

その雛は、羽ばたく。空へと向かって。しかし、何度だって地に落ちるだろう、飛ぶのにその羽根は小さ過ぎるから。けれども止めはしない。だって、既にインプリンティングされていたのだから。私の大好きなあの人は飛ぶんだ。だから、私も飛べるはず。それが、...
少女は星にならない

四話 泡の手のひらは水月を拾う

光線弱々しく変遷しながら遠ざかる茜色。紫色に落ち込んで夜に消えゆく陽光を望みながら、少女は思う。再び明日が来るという道理への不安を。また明日。そんな約束を果たせず両親は没した。ならば、かもしたら太陽すらも。光は儚く、脆い。「いやだ……」不安...
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