茶蕎麦

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口が裂けてもいえないこと

最終話 口が裂けてもいえないこと

最終話 口が裂けてもいえないこと 「……それで、彼は殺されちゃったの」 「お姉さん、それマジな話?」 「うふふ。マジ、よ」 「こえー」 「……いやだ」 青く、透明な秋空に朱が混じり始めたそんな時間。人気に溢れた街の中、公園内にてちらほら解散...
口が裂けてもいえないこと

第九話 花子

第九話 花子 月は惑わず空にある。仰げば確認出来るその事実は、誰に定められたのだろう。過去から続く法則や、森羅万象による奇跡か、はたまたカミサマか。しかし、それはこの世界の決め事ではなかった。 不必要のみを移した写本の如き別世界に倍星など存...
口が裂けてもいえないこと

第八話 以上

第八話 以上 七恵は目眩の極大を味わった。世界が裏返る、そんなどうしようもなく覚束ない感覚の中で、彼女は必死に何かを掴む。その何かは誰かの悲鳴だった。掌に響くそれを掴みきることが出来ずに、サイクルジャージ姿の少女はまた自分を失う。 触れよう...
口が裂けてもいえないこと

第七話 普通

第七話 普通 赤い怪人の、滴っているような、崩れ落ちているような、そんな言の端が特異に聞こえる悪意に満ちたメッセージを受けた二人の間には、しばし沈黙が降りる。この不通は不信によるもの。口裂け女を信じるのは正しいのか、という自問に勇二は答えを...
口が裂けてもいえないこと

第六話 華子

第六話 華子 じゃらりという鎖の音で、少女は目を覚ました。目を開けて、まず始めたのは頬の痛みを思い出すこと。手を伸ばしてつい撫で擦ってしまった左のほっぺたは赤を超えて青黒く腫れている。思わず、触れてしまった小さな指先は、頬に走った激しい痛み...
口が裂けてもいえないこと

第五話 異常

第五話 異常 七恵には居場所がない。それは、両親の不仲だとか、学校内で虐めを受けた経験だとかそういった単純明快な原因に依るものではなく、本当はただ単に彼女が人と合わすということが出来ないためだった。 可能であるのならばしている。それが出来な...
口が裂けてもいえないこと

第四話 高子

第四話 高子 「ええと、次はこっちかな。……うん。きっと、向こうだよ」 「また曲がるのか……随分と、ここいらは入り組んでるんだな」 誰よりも速く駆けられる人が、鈍い他人と歩調を合わせるということはどういうことか。ゆっくりと、円かに二人は歩い...
口が裂けてもいえないこと

第三話 普通

第三話 普通 普通、平凡とは何かと高橋(たかはし)七恵(ななえ)はよく考える。 身長体重のように明確な数値が出るものならまだしも、境遇についての平凡というものを思ってみると、これがなかなか難しいものだ。よくも悪くもあればいいのか、よくも悪く...
口が裂けてもいえないこと

第二話 ゆうじ

第二話 ゆうじ たとえば。そう、たとえば人探しの最中に、街から人影が失われてしまえばどうすればいいのだろうか。 影すら見当たらなければ、何も見つけることはできない。周囲は不気味に静まり返っているような、そうでもないような。ごう、と吹いた隙間...
口が裂けてもいえないこと

第一話 はなこ

第一話 はなこ 「おにーいさん。ね、私キレイ?」 入道雲が雄々しくそびえ立つ空の下、少女は誰かに向かって、そう尋ねる。 二人には、近いようで遠い距離があった。自然、返答には間ができる。 「ほらほら、私を見てよ。どう思う?」 そんな間隙を許せ...
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