ふと、風見幽香は考えた。そういえば、自分は他人に優しくしたことなんて殆どないな、と。
なら、やってみようかと、そんな風に思い立ったのは、霧雨魔法店上空での霧雨魔理沙との弾幕ごっこの最中であった。
「まあ、思ったからとはいえ、流石に、優しく負けてあげるようなことはないわね」
魔理沙が形作る昼空を彩る様々にグラデーションがかり煌めく星々――その全てが魔弾――を避けるために、幽香のセミロングな緑髪や赤いチェックのスカートは彼女の踊るような動きに合わせてそよいで波立つ。
ひらりひらりと、似非銀河、美しさばかりが相似している昼間のミルキーウェイを通る幽香の様は、余りに優雅だ。
輝く五芒は瞬きながら、幽香のゆっくりとした美麗な回避動作の全てをライトアップする。光に囲まれ元気に踊るは、美しき花。その花弁の中に、恐ろしい棘が秘められていることを、その様子を見るばかりの誰が知るだろう。
だがしかし、幽香の持つ棘は、確かにこの世界――幻想郷――にて一際鋭いものとして認知されていた。
「反撃、と行きましょうか」
ぽつりと呟き、舞うただ一輪は、次々とその力を持って宙に花束を作り上げていく。幽香が開いた白い日傘を一振りする度に、その先端から放たれるのは同色の花の様態をした妖弾。
広げるように、幽香が辺りに撃ち出した儚げなその弾幕は、実は強力なものであり、星の魔弾を容易く打ち消しながら広がっていく。
「弾幕はパワー、を花で表現されちまうとはなあ。それでいて、私手製の弾幕を消せても私本体を殺せない程度の威力に収められるなんて、器用なもんだ」
「力持ちは加減が下手なんて、とんだ偏見よ?」
「違いないっ!」
幽香の対戦相手、金髪で白黒魔女姿を採っている少女、魔理沙は弾幕ごっこ――スペルカードルール上のもの――という非殺のお遊びの中でも、最強の妖怪と謳われる大妖怪の力を確かに感じ取って、口元を歪ませる。
ゆっくりと、星を抹殺しながら展開する花々の威力。そして、回避を促し相手を追い詰めるごっこ遊びの中でも自分を失わず、動きを最小限に収めて幽雅に舞うその回避力。
抜群の妖力身体能力を用いずとも、それだけで余裕のある強者らしさを魅せつける幽香は、直線本気を旨とする魔理沙にとってですら眩しく映る。
しかし、恐れて目を閉じずに箒にまたがったまま光に向かい続けるのが、魔理沙だった。
「ルールで縛って手加減を強いても、お前さんは強いな! でも、だからこそ、勝つことに価値が出るってもんだ!」
巨大な黄色いものすら現れ、星は消え花が支配するようになった宙空の隙間を、魔理沙は直線で縫い飛び、幽香の手前まで来てから、星をばら撒く。
パリンという音とともに現れるは、群れなす流星。魔理沙手ずから割った小壺から大量に展開する七色の星々は、あまりに至近ということもあって、避ける隙間は殆ど無い。
しかし、ないなら出来るまで待てばいいと、広がるそれらから少しばかり下がることで、幽香は悠々と時とともにバラけた星の隙間を通った。
「よし、下がったなっ!」
だが、それこそが魔理沙の狙い。幽香が攻撃を中断しながら下がったがために、程よい具合に空いた何もない二人の距離。
力で埋めるに丁度いいその間隙を、魔理沙は喜ぶ。そして、ミニ八卦炉という魔理沙の武器――彼女の力を極大までブースト出来る代物――を向けてから、彼女は、一枚のカードを逆手で持ち上げ、宣言をする。
そう、これこそが様々な戒めのあるスペルカードルールの弾幕ごっこ中でも一番の目玉であるスペルカード――先に提示し合いその枚数の分だけ両者が行える各々の必殺技――の展開。
溢れる光を発端とし、弧を描いた口元から溢れる名前と一緒に、その必殺技は発される。
「いくぜ! 恋符「マスタースパーク」!」
それは以前恋した力の輝きを模した光線。あまりに太いレーザーは、あっという間に相手を飲み込む強い熱量と化す。
弾幕に派手さ、火力を求めた魔理沙は、物真似に行き着いた。そう、彼女は眼前の強者幽香が過去に戯れに放った光線の方法を盗んで改良を重ね、自分の切り札と変えていたのだ。
さあ、幽香は自分のものであった時よりも魅力を増した、この光の束を、果たして無視して避けることなど出来るだろうか。
また、この直線的な攻撃から逃げられた時のために、魔理沙は二段構えとして周囲に広がる度に交差を重ねる巨大な七色の星を自身の周囲から全体へと向けている。
だから、先程までのように、急がず慌てず、力を一部も発揮せずに避けるようなことは如何に幽香であろうとも不可能だった。
本気のぶつかり合い。それを望む魔理沙は勝ち気に笑みながら、光眩しい中で未だ動かない幽香を見つめる。
「力は大したものではないけれど、美しさでは魔理沙のものの方が上ね。いいわ。恐れずに私の愚作に一筆入れることを怠らなかった、貴女の努力を認めてあげる」
そして、その身に迫ったマスタースパークに対して幽香が取った行動は、魔理沙と殆ど同じだった。
幽香は迫る魔光に右掌を向け、そして反対にカードを持って宣言をする。
「花符「幻想郷の開花」」
「なっ!」
そう、魔理沙が驚愕の声を止められないのも当然の事。幽香が力を開放した途端、全ての光は花弁に紛れて消え去っていったのだから。魔力の直線は、二人の間に生み出されて大量に割りこんで来た黄色の妖弾の曲線によって体をなくした。
最初に生み出されたのは、幽香を守る繭のようにして生み出された黄色い蕾の如くに折り重なった魔力の塊。光線を浴びて、一瞬歪んだそれは、直ぐに細かく解けて行き、幽香を光熱から守りつつ花びら散らすように辺りへと広がっていく。
光によって輝くその花は、強すぎる熱によって大いに外周を焦がして失くしつつも、しかし負けずに大きく美しく開いて、周囲の星屑をすら外へ外へと追いやる。
魔理沙が弾幕に想起したのは、巨大な黄薔薇か向日葵か。そう、これは現にある光景に近いもの。光を浴びて花が開くは当たり前。
げに恐ろしきは、弾幕に表された成長の力だ。開花の美しさは、魔理沙の足を、一瞬でも止めてしまった。
「……くっ、うおっ」
逃げ遅れた魔理沙は、一枚の花弁に触れてしまい、その身に強い衝撃を負う。そうして宙での身体操作を失敗すれば、あとは墜落あるのみ。
燃え尽きることさえなければ、流れ星は、地へと墜ちる。
しかし、そんな当たり前がつまらなかったのか、魔女帽を先に落として失くした魔理沙を助ける力があった。
そう、魔理沙の小さな身を受け止め助けたのは、花の蔓。青い円錐形の花を、魔理沙に巻き付くか細い蔓にて多量に咲かす、そんな様子からその植物は朝顔であると分かる。
そういえば幾らか庭に種を植えておいたような覚えがあると、そう思い出しながら、魔理沙の金の瞳は優雅に着地するフラワーマスターの、笑み絶やさぬ姿を望む。
「……幽香がやったのか?」
ぐるぐると身体を巻き上げられながら、ゆっくりと地に降ろされた魔理沙はそう零す。
まさか、普段水をやっていたお礼にと、朝顔が急成長して伸びてきて自分を助けた、なんていうのはいくら幻想郷であろうとも起きやしないことだと分かっていた。
自分以外にこの場に居るのは風見幽香一人のみ。ならば、花を操る能力を持つという彼女がその力を持って優しく自分を助けたのでは、と考えないでもない。
だが、そんな訳がないだろうと魔理沙の冷静な部分は思う。
ゆっくりと、巻かれたまま身動きの取れない魔理沙の元へと歩み寄る幽香のその性格は、悪点見つからないその美しい見た目と異なり非常に悪いものであると言われる。
普段は気分屋でマイペースな部分が表立って目に付くが、これが他と関わる時になると大きく変わる。直接的な悪口こそないが、笑顔で相手を揶揄したり平気で弱点を突いてきたり等など、まともに他人と付きあおうなんてしない。
兎に角、常に自分が上位に立って相手の気分を悪いようにコントロールするのを好むのが、風見幽香という妖怪の特徴なのだ。
そんな幽香が、唐突に宗旨変えして、魔理沙が痛むのを嫌い能力によって花を咲かし、伸ばして助けた、とはとてもとても考えられないこと。
ならば、これは何か自分に対する嫌がらせの布石なのかと、蔓から逃れられないまま魔理沙は近づいてくる幽香に対して思わず身を固くした。
「いい子たちね、戻っていいわよ。……あら。どうしたの、魔理沙? 固まっちゃって」
「お、おう。あれだ。ちょっと間近の朝顔に見惚れちまってさ」
「そう。でも残念ながら、あの子たちはもう退いてしまったから、そんなところに這いつくばっていないで、起きたらどう?」
「……分かった」
足元から、恐らくは幽香の能力によって緑の蔓が引いていくのを認めてから、魔理沙はそろりと立ち上がる。自分の身に変化がないのを確かめるためにパタパタと服を叩くことで、片側ばかりおさげに纏めたふわふわ金髪が揺れて跳ねた。
そうして理解するに、どうも本当にただ助けるために、自分に対してわざわざ幽香が能力を使ってくれたようだ。これには、疑っていた分だけ少し捻くれた少女である魔理沙も感謝を覚えずにはいられない。
「私が頭から墜ちる前に花を使って拾ってくれた、っていうことで良いんだよな。幽香、助かったぜ」
「別に構わないわ。私がしたくなったからやっただけ。まあそんなことより、賞品の話をしましょう」
「げっ」
幽香も偶には仏心を出すのだな、と頬をニヤけさせていた魔理沙は転じて継げられたその話題に顔色を変えた。
賞品。そう、弾幕ごっこは女子供向けの遊戯であるが、別に、その勝ち負けに何か賭けることを禁じられてはいない。
だから、弾幕ごっこをしようと遊びに来た幽香に喧嘩を吹っかけた魔理沙が、イマイチ反応が悪かった彼女の気を惹くために、手近な自分をベットしたことは、そうおかしなことではない。
負けてしまった今、賞品たる自分がサディスティックな性格の幽香にどう使われるのか、想像もつかないことが魔理沙には空恐ろしかった。
「確か、勝った方が、負けた方の言うことを一つ聞く、だったかしら」
「そうだったな……畜生。勝つことしか考えてなかったぜ。全く、何をやらされるんだ?」
とんでもない要求だったら逃げて、いや逃げきれるものではないから面倒でもやるしかないのか、等と考えその内容に合わせてコロコロ表情を変える魔理沙を、変わらぬ微笑みを湛えながら幽香はしばし黙って見つめる。
手に持つ日傘を自分の都合のいい場所へ定めるまでの間焦らしてから、幽香は疑問に答えた。
「ふふふ……私の勝ちに間違いはない。だから魔理沙、貴女は確かに私の言うことを最後まで聞きなさい」
「分かったが……なんか変だな。最後まで? どういうことだ」
「言葉通りに、逃げずに私の発言を最後まで残さず聞きなさいっていうことよ。私が貴女に望むことなんてそれくらいしかないから」
「おいおい、幽香。お前は私に何を喋るつもりなんだよ……」
言葉だけだろうが、果たして、幽香の嗜虐心を満足させるような内容とはどれだけ酷いものとなるのか。目の前の幽香が何時もと変わらぬ存在だと勘違いしている魔理沙は、怖気を感じてブルリと背筋を震わす。
「魔理沙、貴女も強くなったものね」
「はっ?」
しかし、発された言葉は、想像の中の冷たいものとは程遠く、むしろ暖かくむず痒くなる代物だった。
「魅魔にくっついて手の中で星を遊ばせていた頃から見て、魔理沙、貴女は随分と達者になった。弾幕ごっことはいえ、貴女が霊夢と伍せるほどに成長するとは、私も思っていなかったわ」
「……そ、そうかい」
「でも、普通に魔法使いを出来る程度の才能しかなかった貴女がここまで至るには、大変な努力が必要だったでしょう。貴女は否定するでしょうけれど、魅魔ですら苦労して通った魔道を、これ程の階位まで人の身のまま若くして登った事実は、否応なしに背後の尽力を浮かび上がらせる」
「いや、それは」
「ここまでよく、頑張ったわね。そういえば、マスタースパークと言ったかしら。あのアレンジなんて、特に美しかったわ。人のものを盗みたくなるほど確りと受け止められる貴女には、きっと物事を発展させる才能があるのね」
「っ! な、何が言いたいんだよ、幽香!」
ペラペラと、幽香が淀みなく発するは、魔理沙に対する褒め言葉。あまりに優しげな口調で語られるそれらは、素っ気ない普段とのギャップも相まって、魔理沙の全身に鳥肌という拒否反応を示させた。
それに耐えられなかった魔理沙は、思わず結論を急がせて、話を終わらせたがる。
「大丈夫」
「うぉ」
しかし、そんな魔理沙を安心させるかのように、幽香は真白い指先を何処かへ落とした黒い魔女帽の代わりにぽふりと置いて、そして撫で始めた。
決して傷めつけず絡ませぬよう、ゆっくりと。その手つきの優しさが、魔理沙の緊張を僅かに解す。
「慣れていなくて、むず痒いでしょうけれど、裏のない言葉から逃げることはないわ。受け取って、安心したらどうかしら。魔理沙、貴女はここに居ていいの。むしろ、今となっては誰もが貴女を望んでいるわ。それも、貴方の努力の成果」
「……私って、分かり易いか?」
「貴方の不器用で臆病な面に気づいている者も少なくはないと思うわ。でも、そんな可愛いところも霧雨魔理沙の個性として、皆愛している。勿論、私もその一人」
「……ったく。幽香、お前、今本当に素面か?」
細められ、しかし真っ直ぐ向けられた赤い瞳を避けるように、魔理沙は頭を少し下げる。おかげで撫で易くなったと、幽香はごきげんになった。
撫ぜる手つきに熱がこもったのを感じ、そういえば、自分はどうしてこんな触れ合いを受け止めているのかとようやく思い、魔理沙は恥ずかしくなって頬を染める。
しかし、それでも、振りほどき距離を取るようなことはしなかった。懐かしい暖かさを、逃したくはなかったから。
「言わずとも伝わっているだろうことを、わざわざ口にする無粋だって相手を想ってのこと。魔理沙がいくら強くなっても、人の子なのだから、休み寄りかかることの出来る拠り所は必要。馴染みの私がそれになっても、きっと悪くないでしょう」
「本当に、いいのか?」
「寄り添うのが、花一輪でもいいのなら、幾らでも」
ここに至って、ようやく魔理沙は幽香が自身に愛を持って接していることに確信を持つことが出来た。それは忘れていた母のものを思い起こさせて。安堵した魔理沙は、幽香が毛髪をくすぐる優しい指先に目を細めて身を預ける。
魔理沙は自由奔放で、なるだけ常識に囚われないように生きていた。しかし、そんな魔理沙も少女である。親元離れて一人で寂しくないわけがなく。弱みを隠しながら、婉曲的に他人に甘えることを繰り返して生きてきて。
でも、期せずしてこの場でそれを指摘し分かってくれて甘えさせてくれる者が現れた。こんな好機、味わわなければ損である。唐突に安心をもたらしてくれたのが幽香であるのには魔理沙も驚いているが。
「……っ」
「あら」
それは撫で付けられたまま二・三分程か或いは半刻も経ったくらいか。心地よい時間に身を委ねていた魔理沙に過ぎた時の程度は分からなかったが、急に彼女ははたと我に返った。
自分の家の前で、幽香に顔を伏せながら撫でられている自分。それはなんて不自然な姿だろう。もし口と行動の軽い烏天狗辺りが通りかかったとしたら、大いに写真機を働かせて興奮するような光景を魔理沙は作っている。
そも、雰囲気に呑まれて安心してしまったが、よく考えれば頭上の人物は幻想郷でも指折りの危険人物。自分はいたずらにからかいの種を与えてしまったのではと思った魔理沙は、バッと離れる。
今更になって身を預けた自業を恥ずかしく思いながら、残念そうに手を引っ込める幽香に問いを向けた。
「な、なあ。どうして幽香は……急に私に優しくし始めたんだ?」
「私は年長者。別に、子供を可愛がることは不思議でも何でもないわ。それに、何より……」
一時、幽香は言葉を止める。その先が気になった魔理沙は、ごくり、と固唾を呑んだ。
黙し、空を巡る風を追うようにそっぽを向いた幽香は、そのまま体ごと一回転してから、再び魔理沙を見つめる。
そして、幽香は今までで一番上等に微笑んでから口を開き、顔を真っ赤にして照れている魔理沙に止めを刺した。
「私達、友達でしょう?」
幽香が迎えるように真横に手を伸ばして、放った爆弾発言はあたりに響く。
当たり前のように口にした、その言葉は魔理沙の導火線に火を点けた。そして、僅かに経って、魔理沙は爆発する。
そう、真っ赤に湯だった魔理沙の顔はこれ以上ないほど熱を持ち、それでも溢れる熱量を持て余す。彼女は顔を両手で覆い地団駄を踏んでから、耐え切れずに背を向け駆け出し、一気にその場から逃げ出したのだった。
「う、ううー……ゆ、幽香がおかしいぜー!」
星屑を零しながら、箒に乗って魔理沙は幽香の優しい掌の届かぬ空へと去る。
自分の家から果たして何処へと逃げるのだろう。迷走中。しかし、去り際のその一言は、的確に事態を表していた。
「コレも、楽しいわね」
そして、白黒な後ろ姿が見えなくなるまで望んでから、幽香はアルカイックな微笑みをサディスティックに崩す。
幽香はためしに優しくすることで、別段何かを期待したわけではない。しかし、ただ何時もと違う当たり方をしただけで、普段は見られない相手の無様を見ることが出来た。
それは、幽香にとって思わぬ収穫である。
「私って、優しくする才能があるのかしら?」
冗談のようにして、幽香は自惚れてみるが、しかしそれはあながち間違ってはいないことだった。優しくするのと虐めることは、共に言葉や行動が心にどう作用するか熟知していなければ失敗に終わる。
そう、優しくする方法は、虐めるやり方とどこか似通る部分があった。相手の労って欲しい部分をくすぐることと、相手の突いて欲しくない点を突付くことの違い。
一方に長じていた幽香が、もう片方が下手な訳がなく。そして、虐めるのが好きであれば、優しくすることに興味をもつことも、他の反応を楽しむ幽香であるからこそ、あり得ることだった。
「何時かは同じ相手に両方試してみるのもいいかもしれないわね。まあ、今は優しくしてみることが優先だけれど」
こうして幽香は飴と鞭を手に入れた。現在は飴を与えることを気に入っているが、一体何時まで続くことか。
しかし、それが大妖怪の気まぐれであるからには、十年百年続くことすら考えられた。
果たして、幻想郷の住人は優しい幽香を受け入れることが出来るのだろうか。
全員が変化を認められればそれでいいが、しかし、魔理沙のように受け入れられない者が多数となるかもしれない。
もしそうなるとしたら、幽香の心変わりが異変扱いされる日も、近いだろう。
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