原作版・皆に攻略される百合さんのお話

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原作版・皆に攻略される百合さんのお話

ルート1 熾火の恋人 火膳ふよう①

愛とは、連綿と親から子に伝えられるべき概念である。温かさ、優しさなどがそこから生まれるものであるとするならば、それは最早生きるに要るものとすら言えた。 けれども、人というものが不定の生き物であるのであれば、外的要因などで失伝という悲しいこと...
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番外話 世界は消してしまいたくなるくらいに価値がある

樋口三咲は、お姉ちゃんである。そして、それ以外には特に特徴的がない人間だと、三咲本人は思っていた。 「ユイ! ダメでしょ、勝手にハサミで遊んじゃ! もし手を切っちゃったら危ないんだからねっ」 「うー……」 「うー、じゃないの。ごめんなさいで...
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第X話 のーまるえんど/END OF THE PROLOGUE

『もし、世界が終わってしまうとしたら、あなたはどうする?』 その問いかけに、意味はない。だから、あなたが答える必要なんて、なかった。 それは終わりの前の一瞬の残影。電源を切った後の画面に残った僅かな眩さ、その感覚。 記憶にも残らない、しこり...
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第零話 バッドエンド

水野葵は奇跡そのものである。そして、奇跡に選ばれてしまった者でもあった。 甘ったるい、チョコレートの見目。淡く細かいレイヤ。全てが愛されるばかりの必然。葵はそんな麗しさを纏った乙女。 そんな葵はしかし、どうしようもなく簡素な内面をしていた。...
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第十三話 デッドライン

あたしにとって、月野椿という女の子は、憧れに近いものであったのかもしれない。 とても綺麗でお金持ちで健康で、そして何より色々大っきい。とても高いところから、彼女はあたしを見下ろしていたのだ。 人を踏んづけて、幸せになる。対象があたしであるこ...
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第十二話 魔法使いの少女

「はぁ……」 砂時計は逆さにすれば再び動き出すけれど、零れた水は戻らない。そんなこんなを、時間と共にぽろぽろ落ちてく命を参考に改めて理解しながら、あたしは秋晴れの下に曇った心を抱えて歩く。 指先一つ動かすのもおっくうな身体を、未だ死体でない...
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第十一話 蛇足、或いは遺言

柔らかに、風が草を撫でる音がする。そして、そんな音色を気にも留めずに歩を進めるざわめきも。そこで、遅ればせながらあたしは気配を察する。 あたしたちの会話の隣で人が居た。そのことに、今更気付いてあたしはそちらへと振り向く。 エノコログサの傾ぎ...
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第十話 奇跡

暑気をまだまだ感じる秋の候。でも風は涼しくなってきたなと思いながら、あたしはお昼休みに校庭をぶらぶら。浮けない程度の軽い身で色んなものをのぞき見た。 猫の足跡、忘れられたラインカー、お空を覆ういわし雲。どれもこれもが面白くって、あたしの中に...
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第九話 尊重

『この芸人さん、本当に美味しそうに食べるねえ。ボク、彼のこと気に入っちゃった!』 「紫陽花ちゃんって、食べ歩き番組観るの好きだねー」 『そういえば……何時も一緒に観てくれてるけど百合ちゃんはこういうの観ててつまらないとか、そんなことはないの...
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第八話 間違ってる

お庭のなすびがぱんぱんに張ってきた今日この頃。日差しの強さよりも空気の暑さの方が気になる時節に、珍しくもあたしは外出をしていた。 青空には、随分と成長した入道雲が遙か遠くに。何に遮られることもなくぎらぎらと輝く太陽が、あたしを容赦なく攻め立...
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