二次創作小説

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美鈴おかーさん

第十一話 サクヤ

その銀の少女が人里に現れたのは、酷く暗ったい夜も更けた頃合いであったようだ。少女は、幻想郷では珍しくもない木造の家屋の間をきょろきょろと驚きに怯えながら歩いていたらしい。酔いに酔った、問屋の番頭が赤ら顔で目抜き通りを歩んでいたところ、そこに...
美鈴おかーさん

第十話 〇〇〇〇の幻想入り

彼女、〇〇は己が稀なる血の先祖返りであるということは知っていた。それもそうであるだろう、こんなシルバーブロンドの自毛を生やした日本人なんて、他にはいない。祖父が厳しく話すのを聞くまでもなく、自分が他と違うことくらい分かっていた。「でも、まあ...
美鈴おかーさん

第九話 †

「むにゃむにゃ……」パイプ椅子に背を寄りかからせて、ぐっすり。その赤い髪おさげを垂らしながら、赤き彼女は眠っていた。つるりつるりが継ぎ目なく。そして少女の周りで時折キラキラ星空のように瞬く原色が、出来損ないのサイエンスフィクションのような内...
美鈴おかーさん

第八話 虹

上白沢慧音は、戸惑っていた。昨今人里に見受けられる妖怪への恐怖を忘れがちな風潮を憂い、人里にて自らの寺子屋を作るという目標のための方々への根回し、そして子供達と顔を合わせていく内に、最近しょっちゅう耳に入るようになった名前。紅美鈴。人側とは...
美鈴おかーさん

第七話 どうして貴女は

月は分厚い雲間に消えて、幻想の地は蕩けるような、闇の中。多くが寝入る夜に、レミリア・スカーレットは幻想の空気を初めて吸い込んだ。すぅ、と花蕾の唇は開かれて、喉が動いて涼を嚥下する。人工の飛沫は完全に除かれた、暫くの間味わうことすら出来なかっ...
少女は星にならない

十五話 天泣く程に恋しくて

たとえ雨に心地が乱れたとしても、失くしてこの世は恵まれない。ただ気圧によるものか時に頭がずくんと痛む。思わず庭の先に巌を望めどそこに救いなどはなく。そんな私事を気にするのはらしくないと彼女は思えども、それでも視線は度々空へ向いた。雨粒を幾つ...
美鈴おかーさん

第六話 レミリア・スカーレットの幻想入り

レミリア・スカーレットは吸血鬼である。それも、彼女はドラキュラの祖であるヴラド・ツェペシュに連なる家系に生まれたのだとされた程の、生粋の血を啜るもの。父曰く、実際にかの串刺し公との繋がりは薄いそうであるが、それでもレミリアは生まれつき強力な...
美鈴おかーさん

第五話 べびーしったー

朧月夜に影二つ。まるでそのものと見紛うばかりの見事な人の形に、球の集い重なりのような不可思議な形状の黒。そんな二つが並んで空を往く。仲良く、というには一方が少し先導しているような感もあるだろうか。空飛ぶ人間のようなものが、闇を引き連れている...
美鈴おかーさん

第四話 私の方が

博麗神社を祟る怨霊。いや纏わり付き過ぎた挙げ句に御霊信仰に巻き込まれたのか今や博麗神社の主神のようにすらなってしまっている、魅魔。彼女にとって紅美鈴という妖怪は奇々怪々な存在である。魅魔はこれまで永き間、人の隣で呪っていた精神である。横から...
美鈴おかーさん

第三話 可愛い妹

「はっ!」透過する、薄青に紅。朝霧に乗せた人魚の歌声響く中、霧の湖の畔にて、踊るものが一人。いや、それは舞にしては武骨であっただろうか。美しくも鋭い、それは演武となって霧を裂いていく。優れた形の移り変わりはあまりに素早い。そこそこな長駆を伸...
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