オリジナル小説

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マイナスから目指すトップアイドル

第十話 勘違いヤローども

町田百合は悪辣な視覚情報である。一度奥まで見れば、終わりを知る。最果ての地獄を孕んだ生き物など、蠢くべきですらないかもしれない。そんなものが眼帯をつけて偶像になりきろうとしているのだ。当然、無理が出るというものである。「あぐっ!」地熱に由来...
マイナスから目指すトップアイドル

第九話 プリティサイズだから

吉野友実という少女は、アイドルになるために生まれてきたような存在である。見目は当然のように麗しく、運動神経も抜群で体躯はどこまでも柔らかく、目的のためには媚びることすら容易い精神まで持ち合わせていた。笑顔なんて、意識するまでもなく人生の楽し...
マイナスから目指すトップアイドル

第八話 格好いいじゃない

与田瑠璃花という元アイドルであるトレーナーにとって、町田百合という少女は不可解そのものだった。稚児より下手な歩みで、驚くほどに音痴であり、笑顔を作ることすらぎこちない、そんな無才の全体で彼女はトップアイドルに本気で至ろうとしている。この時点...
マイナスから目指すトップアイドル

第七話 ありがたくなんて、ない

町田百合は地獄に繋がる目を薄く塞いで生きている、少女である。彼女の視界は常に薄くベールに覆われているし、もとより良くない視力は世界をそのままには映さない。汚穢すらも彼女に届くまでには大いに欠けていて。だからこそ、百合にとって世界は遍く遠いも...
マイナスから目指すトップアイドル

第六話 仕方ない

好きという言葉は嘘で、嫌いという思いも間違いで、なら私に正しさなんて一つもない。嘘つきの自分はきっと天国にはいけないだろう。あの果てしない清涼には至れやしない。つまり、これから向かうのは地獄なのか。私は痛くて辛いばかりの、どん詰まりに至るの...
マイナスから目指すトップアイドル

第五話 一人ぼっちは寂しい

田所釉子は、アイドルだった。それも、ただのアイドルではない。天上には及ばずとも、まずただの花として飾られるばかりの代物ではなかった。喩えるならばそれは、輝石。可憐を綺羅びやかな明かりの中輝かせて、その多面な美を周囲に振りまく、そんな少女だっ...
マイナスから目指すトップアイドル

第四話 頑張るです

地獄に焦がされ続ける普段から我慢は得意で、身体は役目に則り復元力に富んでいる。ならば、何本か欠かした歯を食いしばった百合が、痛みに耐えながらベッドの上に固定されたひと月を狂わずに過ごせたのは当然だったかもれない。だが、普通ならば、ただの子供...
マイナスから目指すトップアイドル

第三話 負けない

百合は、地獄の蓋である。つまり地獄の天板であり、皆がそこまで落ち込んでしまないように、踏み敷かれる役割。最低値を超えないようにある、底辺。そんなヒトガタが、百合だった。だが、ヒトガタであるからには、成長が許される。ならばと焦げ付いた心で発奮...
マイナスから目指すトップアイドル

第二話 あなたのためになるのなら

町田百合は、地獄が溢れぬように取って付けられた蓋である。それが偶に人の形をして産まれているだけ。彼女はその役割故に何より地獄に灼かれ続けることこそ重要であり、人間としての能力はおまけに近かった。故に、少女の持つ能力は最低限。しかし、悪に耐え...
マイナスから目指すトップアイドル

第一話 地獄に落ちてしまったとしても

ぎゃあぎゃあとカラスが大いに鳴いた、それは、昏い、昏い一日の終りのことだった。今より十六年と少し前。町田家に、とある赤子が生まれた。性別は、女である。そして、何より彼女の属性は。「うあぁ」「なっ!」地獄だった。最初から開いていたその瞳は、窮...
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