オリジナル小説

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マイナスから目指すトップアイドル

第三十三話 貴女と私は違うから

人影数多ありながらもすれ違うばかりの、一面。地べたを通う誰もが互いに意識していないかと思えば避け合うことばかりは皆上手であるから不思議だ。せかせかした足の動きに、思わずつられそうになる心地を、彼女はスモークガラスの奥からじっと堪える。自分が...
勘違い吸血鬼ばかさねちゃん

第十七話 親友なんてヤダってなんですかい?

イクスは光彦の家、白河家の屋根裏に住み着いてる。いや、以前見た光景を思い出すに、屋根裏にて大量の漫画本の隙間にて過ごしているといった方が正しいのかもしれない。千の次の単位は、確か万だったよな。きっとそれくらいは漫画の数はあったろうし、何度か...
マイナスから目指すトップアイドル

番外話⑥ 恋模様はこうやって

抜けるような蒼穹。自然こそがこの世の美しさのベーシック。だがある日、それはナンバーツーに堕した。「よくないよねー」世界に天井があることがつまらないというのは、一般人杉山ゆずだからこそ考えることだろうか。いや、それとも彼女が天を射抜かんとして...
マイナスから目指すトップアイドル

第三十二話 ジゴクノカマノフタ

町田百合というのは最低値、いやそれこそマイナスから開始した小さき命である。実親ならまだしも余所人が愛するには些か地獄的に過ぎていた子。踏みしだかれるべき最低値、哀れまれるべき地獄の蓋はだがしかし。『トップアイドルになるですぅ!』地獄の頂点か...
マイナスから目指すトップアイドル

第三十一話 マイナス

百合は、ひゅ、と緊張に喉からよく分からない音が出たことを感じた。それが唐突に乱入し楽曲を中断させた招かれざる客に向けられた、数多の視線の物理的に迫る程の印象の圧力によるものであるのは、語るまでもない。沈黙の中知らずぎゅ、っと握ったマイクはき...
マイナスから目指すトップアイドル

第三十話 逃げ出してはいけない

ドームのゲスト室から望めるのは、空きを埋め尽くす夥しいまでの人の数。五万を超える人波がうねるように一人を求めるその様は、まるで蜘蛛の糸のお話に出てくる地獄をすら想起できる。そして、実際彼らはアイドル鹿子という少女一人に天国を覚えている者ばか...
マイナスから目指すトップアイドル

第二十九話 悪役令嬢

譜を音にする。それだけの慣れ親しんだ行為がこんなに緊張するとは思わなかったと、オーキッドプロダクションの若き編曲家、類村慎樹は三つ色で染めた短髪を指先で掻きながらそう述べた。素直に音楽に仕立て上げる、それだけの本来そう過つことのないはずの行...
マイナスから目指すトップアイドル

第二十八話 ハーモニー

片桐朝茶子という少女は人界にあってしまった天国である。そして、町田百合は人界に溢れ出ぬよう地獄を抑える蓋だった。『そういえば結局、あの音楽家さん? あたし達の曲書いてくれなかったねー。どうしてだろ?』「はっ、そりゃ心壊れた後に他人のことなん...
マイナスから目指すトップアイドル

第二十七話 片桐朝茶子

この世に太陽が一つしかないというのは常識ではあるが、それは果たして何故だろうか。生命が育まれるに丁度いいのがこの奇跡の恒星一強の環境であるが故に、大星は複数に並ばない。だが、並べてそれと喩えてカシマレイコを太陽と呼んでいるばかりのアイドル界...
マイナスから目指すトップアイドル

第二十六話 地獄じゃない

七坂愛はこれまで姉という人を今ひとつ知らなかった。なにせ、姉だという舞は自分のことをよく見てくれないし、直ぐお父さんお母さんと口喧嘩を始めるし、何よりお家に帰ってくることすら希なのである。また寒そうな服に強い匂いを纏う目つきの悪いお姉ちゃん...
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