オリジナル小説

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原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第三話 痛み

淡色で町を飾った桜散り、緑ざわめく五月の頃。あたしは|西郡《にしこおり》高校からの帰り道をのんびり歩いていた。 ほどほど辛い坂道を、えっちらおっちら。道中高低差のあるこの町を上から下から望んで、あたしは微笑む。 春の装いだった町並みも、夏に...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第二話 鬼々怪々

空が綺麗になるのが夜ならば、昼は世界が綺麗になる時間であると、あたしは思う。 燦々と輝く一遍。何時もの光景を普通と人は言うけれど、それでもやっぱり皆が当たり前にあってくれることは嬉しい。 それを、あたしは最近痛いくらいに思い知っているだけ、...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第一話 バッドエンドの後に

愛に肢体は要らない。誰がそんなつまらないことを言い出したのだろう。 心だけでは足りない。あたしは彼女の全てが好きだった。 亜麻色の柔らかなその髪に、チョコレート色の肌がお似合いの、芳しき伽羅の少女。水野葵はそんな女の子だった。 日向にあって...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

【原作小説】皆に攻略される百合さんのお話・目次

ゲームは主人公のバッドエンドで終わり。でも、残りの世界は終末に至れどもそう簡単には消え去らない。 主人公水野葵に愛された日田百合は、末期に残ったヒロインたちにも愛されるけれどもそもそも彼女に残った時間すら希少。 幽かな程の命で、彼女らはどんな花を咲かせるのだろうか。
口が裂けてもいえないことば

後書き ハッピーエンド

ピリオドを決めつけられた、暗褐色の世界。 ゴミ捨て場とはそういうもので、私はもう殆どこれに等しい。 終わっていて、もう直ぐに消え去る。死とはそんなものであり、こんなものばかりを私を好んでくれたもの達に与え続けてきたことは慚愧に堪えないことだ...
口が裂けてもいえないことば

蛇足 牛の首

さて、以降は蛇足でつまりこれから述べる【私】とは何かという話に意味はない。 そもそもアイアムアイに自信がなければ【私】と世界にはそれほど差異がないといったのは正直なところ。 だが【私】こと|千里件《せんりくだん》はそもそも未来を知りこの世を...
口が裂けてもいえないことば

エピローグ 口が裂けてもいえないことば

「が、あああぁああっ!」 「あれ、うるさいよ?」 静寂は切創により死ぬ。少女の開いた口からおおよそ人の発するものではないような悲鳴が轟く中、罪悪滔天。 切り裂きジャックのお姉さんは、慈悲もなくただ当たり前のように両足を失った華子の口元へ小ぶ...
口が裂けてもいえないことば

第十四話 怖い話

ゴミ捨て場にて亡くなった命の一つに、足立勇二という青年がいた。彼は花子の友達、足立華子の兄である。 普通、一般の男子であった勇二は一年以上前にこの世のあり得ざる者共が忘れさられて消える前のゆりかごにまで迷い込んだ。 要は怪人やお化けというゴ...
口が裂けてもいえないことば

第十三話 この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません

高橋七恵は、赤マントに見出された歪みである。おぞましき愛の赤に染められて人でなしになってしまった、最早心が無機物に近い噂の乙女だ。 「くっつかないわ」 そして、その無感動な心は身体も同じく血の通わぬものにさせた。硬く、脆く、それこそ硝子のよ...
口が裂けてもいえないことば

第十二話 真っ二つ

物語るばかりの道化が踊った黄昏時に、吉田美袋という少女は死んだ。彼女はやがて嘘みたいに残虐な切り裂きジャックと成り果てる。 そして、明津清太という人間はそもそも嘘だった。薄っぺらの設定、人でなしがこの世に貼り付けた物語は暴かれ赤マントという...
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