オリジナル小説

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口が裂けてもいえないことば

第十一話 笑み

少女の日暮れにブザーは鳴らない。むしろ、闇こそが価値で、見えないことにこそ意味がある。 そう、足立華子には、よく分からないものこそその奥に何かがあるかと思えて願わしいものだった。だからこそ、異世界とすら言えるくらいの違った魔物の世界、ゴミ捨...
口が裂けてもいえないことば

第十話 青年の死/赤マントの登場

血はぽたりぽたりと垂れ落ちる。あまねく全ては重力に頭を垂れるものとはいえ、それは酷く粘って抵抗し、ようやく肉からはがれ落ちるものだった。 終わった一般家庭の一つ屋根の下、男の子を女の子が刺し貫く、そんな非情が夜に溶けていく。 怪人が人を殺め...
口が裂けてもいえないことば

第九話 禁句

喜悦に富んだ人生などそうはない。 或いは空をも飛べずに泥を味わい、やがて己の不幸を感じなくなるまでが普遍であるかも知れなかった。 こと明津清太は、空を飛ぶトクベツ達に地べたを這いずる自分の足では追いつけないことに未だ慣れない不幸な青年である...
口が裂けてもいえないことば

第八話 手を握る

吉田美袋が物心ついてからはじめて切ったものは、折り紙だった。 赤い紙をぶきっちょに真っ二つ。切れ味の悪いハサミを右に左とさせながら切り裂いたそれの出来上がりは見事に歪んでいた。 これは先に保育園で先生が行っていたほど綺麗な切断面ではない。で...
口が裂けてもいえないことば

第七話 ばれちゃった

夕焼けに独りぼっちの影法師長く、地べたをなめる。 愉快げに蠢くその黒は、そのうちに街灯に紛れて消えるだろう。 だが、黄昏。色の階調の表現だけで手元のパレットを使い切ってしまいそうな、そんな空の多色の揺らめきの中、少女は微笑む。 まるで嘘のよ...
口が裂けてもいえないことば

第六話 零点満点

学生が学ぶのは正しいことである。そして、少年少女が愛されることは当然至極、望ましい。 ならば、足立華子という少女は優等である。彼女は小学校を学ぶだけの場所として通い続け、今はなき兄の分も過保護にも両親に愛された。 しかし、正解ばかりを続ける...
口が裂けてもいえないことば

第五話 ちょんぎる

「清太君、次はこっちー。この、あばれるもんがーを取ってみない?」 「もんがー? いや、うん。このぬいぐるみが何かかはよく分からないけれど、美袋が欲しいのっていうのは分かったよ。……よし」 騒々しい機械がクレジットを求めて光り輝く、そんな遊び...
口が裂けてもいえないことば

第四話 後悔

「はぁ……今日も、僕は僕だな……」 そんな言葉は吐息とともに、眼前の鏡を曇らせた。鏡面に映ったくせ毛の少年は、ま白い顔を憂いに染めたままに己を見つめている。 過去と今が本当に繋がっているのか、そう不安になるときが|明津《あかつ》|清太《せい...
口が裂けてもいえないことば

第三話 信じる

「止めなさい」 美袋と七恵。まるで友達が友達に手を差し伸ばしたかのように見えて、その実女の子が化け物崩れに拐かされている二人の姿。 見ていられない、そういう思いをマスク越しに表して、ハナコは七恵が美袋に手をかけるのを止めた。 「ふふふ、ハナ...
口が裂けてもいえないことば

第二話 異世界

世界が一つであると決めたものは、何か。おおよそ、それは焦点がひとつどころにしか合わない人間の在り来りから来たのだろう。 そう、ぼやけた視界の中で少女は思った。 「だから、私とは合わないんだ」 呟きながら喉元のチョーカーを弄る少女、足立|華子...
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