2023-12

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原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第七話 傷

「そろりそろり……」 『すいすいー』 妹に黙って幽霊を家に入れるという隠し事のために、百合は抜き足差し足忍び足。まとまりきらない薄色の髪の毛がそれに合わせて上下する。 軽いその身をそろりとすれば、床に音など立ちはしない。綿のような総身をつま...
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第六話 オバケとお化け

「あれ?」 「百合……」 「どこか痛いの、百合ちゃん?」 儚い水の軌跡がぽろぽろと。煌めきながら頬から流れて哀を描く。丸みを伝って落ちた雫は、少女の小さな手のひらの中で弾けて消えた。 そう。百合が久しぶりに椿とふようと共に喫茶店でホットミル...
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第五話 攻略

日田百合は酷く身体が弱いが、存外風邪や流行性疾患に罹ることは少ない。 それは普段、なったら下手したら命に響くからと手洗いうがいに衛生方面での頑張りを欠かさない故の結果であるが、とはいえ意外と風邪に悩まされがちの椿辺りにはうらやましがられたり...
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第四話 無知

休日を楽しむことって、あたしにはちょっと難しいことだ。 休みはアヤメと一緒に貯まった洗濯物やら外から始めるお掃除やらの家事に追われることでくたくたになってしまうあたしは、家事以外では本当に空いた時間を身体を休める時間に充てるだけ。 特にどこ...
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第三話 痛み

淡色で町を飾った桜散り、緑ざわめく五月の頃。あたしは|西郡《にしこおり》高校からの帰り道をのんびり歩いていた。 ほどほど辛い坂道を、えっちらおっちら。道中高低差のあるこの町を上から下から望んで、あたしは微笑む。 春の装いだった町並みも、夏に...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第二話 鬼々怪々

空が綺麗になるのが夜ならば、昼は世界が綺麗になる時間であると、あたしは思う。 燦々と輝く一遍。何時もの光景を普通と人は言うけれど、それでもやっぱり皆が当たり前にあってくれることは嬉しい。 それを、あたしは最近痛いくらいに思い知っているだけ、...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第一話 バッドエンドの後に

愛に肢体は要らない。誰がそんなつまらないことを言い出したのだろう。 心だけでは足りない。あたしは彼女の全てが好きだった。 亜麻色の柔らかなその髪に、チョコレート色の肌がお似合いの、芳しき伽羅の少女。水野葵はそんな女の子だった。 日向にあって...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

【原作小説】皆に攻略される百合さんのお話・目次

ゲームは主人公のバッドエンドで終わり。でも、残りの世界は終末に至れどもそう簡単には消え去らない。 主人公水野葵に愛された日田百合は、末期に残ったヒロインたちにも愛されるけれどもそもそも彼女に残った時間すら希少。 幽かな程の命で、彼女らはどんな花を咲かせるのだろうか。
空を飛ぶ程度の――

第十四話 ゆっくりしたい

「っ、くうっ!」 「はいっ、一夏くん残念ー」 「うわっ!」 どすん、というよりもずどん。そんな音とともに地面に突き刺さり、機械と人で出来た奇妙なオブジェと化した一夏を冷然と見下ろし、ロシアの第三世代ISのカスタム機、ミステリアス・レイディを...
空を飛ぶ程度の――

第十三話 極み

IS学園第三アリーナ。遮蔽フィールドによって、存分に戦闘行動を採ることが出来るこの場。逆に言うならば檻の如くに閉じられて空へ向かうこと難しいそんな閉鎖空間にて、大空の自由を体現する一機があった。 旧いそれ――打鉄――は最新の機体の狭間、攻撃...
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