第八話 才能は、ない

先代巫女な慧音さん 霊夢に博麗を継がせたら無視されるようになった

幻想郷唯一に近い森林地帯、魔法の森。
ここは、高低疎らで密な樹木に凸凹した地面は人の出入りを拒絶し、またその名の由来となったまるで魔法にかかったかのような幻覚をもたらす茸の胞子が飛び交う、そんなジメジメ不快指数抜群の地だった。
魔法の森には人は寄らず、それどころか妖怪ですら嫌煙してしまう程。とある花妖怪等に至っては一瞥し、ここはまるで孤独な頭でっかちのための実験場ね、と呟きそのまま踵を返して振り返ることさえなかったそうだ。

実際、彼女の言葉通りに年がら年中残念な風に条件が固定されているこの土地は反して、環境変化による誤差を考慮しなくて良くまた他者というノイズの入りにくい、知恵あるもの達が欲しがる条件を備えていた。
それこそ、実践派の魔法使い等には好ましい場所であり、また人を避けるにはもってこいの引きこもりの聖地のようでもある。

さて、そんな魔法の森の中ほど、不自然なほどに拓けた空間に何やら西洋風の一軒家があった。
これまでずっと文字通りの幽霊屋敷であったそこに、最近は子供の高い声が響くようになっている。
まるで館の主を恐れて木々が手を引っ込めているかのように、燦々と降り注ぐ陽光に持ち前の金髪を煌めかせながらかれこれ家出歴半年となった少女、霧雨魔理沙は家主に今日も問った。

「魅魔様ー。この本、前に借りた本と殆ど内容同じなんだが、渡す本間違ってないか?」

太陽に紙を透かせてみたりしている魔理沙は、未だ空の一つもろくに飛べない魔女見習い。この頃ようやく魔法の装備を身に着けずとも魔法の森を闊歩出来るようになったくらいの、新米だ。
だが、そんな彼女はここ幻想郷でも指折りの魔法使いであるところの悪霊、魅魔を呼ぶ。
果たして、様付けで呼ばれた師匠は、押しかけ弟子である少女の傾いだ頭を面白そうにしながら、すうと壁をすり抜けやって来る。幽霊の尾っぽを足代わりにくねらせ、魅魔は言った。

「ふふ。一語一句までかは分からないが、山となる本の数々を頭に入れた上でふた月前に読んだ本を覚えているとはまずまずじゃないか、魔理沙」
「はいはい、魅魔様お褒めの言葉ありがとさん。で、結局この本とあの本の違いって何だ? 何か旧臭いっていうのばかりは理解できるんだが……」

ふよふよ浮かび続ける幽霊に、家出少女が畏まっていたのは二日ほど。
三日坊主よりもなお物臭な少女は殊の外魅魔に気に入られ、故に彼女は弟子の敬意皆無な様付けですら許容する。
むしろ、こっちの方が面白いと、魅魔は魔理沙を魔法使いとして驚くほど真っ当に育てていた。それこそ弟子に貸し与えるために一室を埋めていた本の山を殆ど崩してあげるくらいに、師匠は本気である。

ちなみに、現在の魔理沙はまさかアレだけ読書中毒とバカにしていたあの慧音さんの真似事をするようになるとはな、と述懐してしまうくらいには魔法の本に夢中だ。
今は本を枕に、本を机に、本を食台にして暮らしてすらいる。それで普通に成長している実感が、さらに少女を魔道にのめり込ませていた。
だがそんなに学びに耽っていたからだろうか。彼女は本の内容被りを嫌に気にした。
間違い探しのような、そんな程度しか学びのない二冊目。それがどうしてこんなに気になるのか。ずっと首を傾げて答えを欲する魔理沙を前に、師匠は笑みを深める。
魅魔は、指を一本立て、空に何かを描くようにしながら、答えを述べていく。

「それはだねぇ……自力で気付いて欲しかったんだが……流石に今の魔理沙には難しかったか。まあ、違和感を覚えているだけで十分かな。あー……簡単に言えば、前の魔術書と違ってその本は経年によって魔力を帯びている」
「へぇ……なんだ、これ妖魔本だったりしたのか?」
「いや、妖怪が書いた本でもなく、ただの魔法使い未満の人間が書いたグリモワールとすら呼べない低級な魔術書ではあるが……しかし、見るものの練度次第でそれと分かるくらいには、全体に魔力が存在しているよ」

一節を読んで分かるではなく、全体を見て理解する。それだって学びだと、魔法使いの先達は教える。
聞いた魔理沙は目を皿のようにして本を表に裏にして凝視するが、いかんせん研磨の足りない原石少女であっては陽炎よりもつかみ取りにくい魔力の波動を感じきれない。
だが、それでも違和感の正体ばかりは理解できたようで頷き、椅子代わりの本の上にそっとその一冊を置いてから、呟くように言う。

「なるほどなぁ……今の私じゃ、まだ見抜けなかったってことか……正直悔しいな」
「観察力を高めるのは、世界に問いを続ける魔法使いには必要なことだ。とはいえ、魔理沙、あんたの頑張りには目を瞠るものがあるからね。そのうちに、魔力に色の違いすら感じられるだろうよ」
「はー……流石は魅魔様ってところか。伊達に年くってないぜ」

魅魔は可愛らしい愛弟子を撫でながら、明日に期待を込めてそう予想する。
だが褒められ、しかしただ頷いてばかりの霧雨魔理沙ではない。もっと反応が欲しいとからかい、雲の上の実力の魔女を親しくもそっと見上げる。
そんな小憎たらしさに、怒ることなくただ目を瞑った魅魔は。

「私は、悠久を生きる精神。幽霊に年齢なんて意味はないが……」
「痛っ!」
「それでもまだまだ若いつもりだ。あまり、師匠をからかうもんじゃあない」

ただ、仕方がないからと、教育のために軽く頭にげんこつを載せた。
大げさに痛がる魔理沙も、ふわふわてっぺんを撫でながら思ったより平気なことにむしろ再び首を傾げることになる。
いや、この優しい師匠のどこが幻想郷きっての大悪霊なのか。ついつい、軽い魔理沙の口は本音を漏らす。

「いや、それにしても小突くだけとか、魅魔様って随分優しいのな。慧音さんが語っていた悪霊振りとは殆ど別物だ」
「ふん……あの子はそんなことを言ってたのか……やれやれ、こりゃお仕置きだね」

慧音。そんな名前を聞いた魅魔の瞳には剣呑なものが満ちる。
以前、何度か異変に挑んだ仲間として慧音は魅魔のことを話していた。それこそ軽く、私をからかってばかりの悪霊とかなんとか。
だが、この瞳の奥にははどうもそれだけでは済まないようなそんな情が籠もっているように魔理沙には思えた。
幽霊に好まれるなんてのはぞっとしないが、それどころかここまで執着されるとは。思わず慧音さんご愁傷さまと言わずとも考えながら、弟子は師匠に更に問った。

「ふうん……察するに魅魔様、慧音さんと仲が良いみたいだが、正直関係性が分からんな。聞いても良いか?」
「まあ、それは構わないが……そうだね」
「うん?」

問いに一考。そうして一拍の間もなく魅魔の広げた手の上には一冊の本が現れた。
魔法のようで実際魔法による移動。不自然極まりない筈の魔法。だがその発動のあまりの自然さに改めて魅魔の実力の高さを覚えた魔理沙は、しかし出現した本のあまりのみすぼらしさに首を傾げる。
どうにもこれは旧く、更には汚れていて不明だ。だが、それを手にした魅魔様はこれまでになくご機嫌のようで。
どういうことだろうと考える魔理沙にそれを押し付けるようにしながら、魅魔は続ける。

「聞いた後で、あの子にこれを届けてくれたら、ありがたいね」
「薄くって嫌にずたぼろで……しかも引っ付いてるな。なんだ、この本?」
「それは、私の話を最後まで聞いてくれりゃ、分かるかもね」
「ふぅん……」

細まった瞳。そこには果たして何時の記憶が映っているのだろう。魅魔はとても幸せそうだった。
なんとはなしにこれは極めてこの人にとって大切なものだと察する。そして、それが少しむっとしなくもない。
この人にとって、私は未だ可愛い弟子でしかなく、心を荒立てる程の仲ではない。
馴染みの古道具屋の店主の紹介にて結ばれた、未だ半年程度の相手。とはいえ、撫でる手が優しければ愛着が湧くのも自然で、また子供は嫉妬心を隠すことは苦手だ。
ちょっと膨らんだ頬を愉快に思う魅魔は、ほっぺを突きながらそういえばと話を一つ。

「そういえば、魔理沙は知っていたかい?」
「んー? 何のことだ?」
「実は、かの博麗慧音が最初になろうとしてたのは、巫女ではなくて魔法使いだったってこと」
「へ?」

そして彼女は満面の笑みで驚く魔理沙の愛らしさを楽しむのだった。

 

魅魔という悪霊はずっと、博麗神社を呪う精神だった。
何故かなんてもうよく分からないほどの昔から、彼女は神社に関する者やそれが行き着いた幻想郷全てを呪い、悪さばかりをしていたのだ。
そんな彼女が魔法という道具を得たのは、意外にも幻想郷のはじまりの頃から。
幻想郷のありとあらゆるものから嫌煙された魅魔が行き着いたところが魔法の森で、そこに偶々あった洋館に魔法の本がなければ、きっと彼女はここまで強大な存在にはなっていなかっただろう。

「うらめしや、にも飽いたね」

だが、そうして余計なこの世の道理に染まったことにより、そのうちに魅魔の恨みの心は薄まってしまった。
関心が方方に向いてしまえば、一つどころを思えなくて然り。愛しいと言わんばかりに呪っていた心も、熱が薄まりそれこそ恨めしくもなく。
ふわふわなお化けの尾っぽもこうなってしまえば、己の不安定さを示すものであるようで面白くもなかった。

「ふぅむ」

だから、学びを始めた魔法の方にのめり込んでしまうのは、彼女にとっては当たり前。
最初は幻想郷に雑多に散らばっていた魔導書の殆どを拾い上げて、魅魔は洋館の殆どを本の山とした。
そして気まぐれに空に魔法を放ったところ、ぶっといレーザーを発生させた己の天才ぶりに、彼女は驚嘆するのである。

「敵が居なくなっちまうのも、つまんないものだね」

霧より尚湿っぽい幽霊を嫌ったのか、胞子すら届かないひんやり快適な家の中、しかし魅魔は悩み続ける。
さて、自分は呪った。だが、それで嫌われこうして独り。燃え盛っていた過去ならまだしも、今となってはそれが寂しい。
とはいえ、誕生とは真逆の幽霊の身。愛なんて望めやしないし、そもそもそんなの今更ごめんだという捻くれた心だってあった。

故に、悶々とした日々は十年、百年近くも続いて。そんな孤独な頭でっかちは。

「この屋敷に本が蒐まっている聞いた。悪霊も住まっているとも聞いたが……ならば、夜分遅くに失礼する」

ノックの音に響いた真っ直ぐな声色、また生きたものの探究心に。

「……本当に、失礼な奴だね」

眉根を寄せたのだった。

「ふむ」
「……はぁ」

どうやってか魔法の森を突っ切ってきた本の虫が、居着いた。
それは、子供であるし、礼儀くらいは知っている。更に夏の間と期限を区切っての居候であるらしい。
ならば、近くでちらちらしようが仕方ないと認めるくらいの度量は魅魔にはあった。

「それ、読めるのかい?」
「いや、読めないな。魔法というのは私には理解しにくい上、そもそも言語も分からない」
「はぁ?」

だが、魔法使いの才能がこれっぽっちもないのに、それでも知識を蓄えんと一冊のノートと分厚い辞書を持って読書を遅々と進める慧音のことまで理解してあげるのは不可能だった。
分からない、分からないとそればかりで覚えることすら難しい。そんな呪文ばかりを覗いて笑顔を続ける女の子なんて、魅魔にだって不気味そのもの。
なんだこいつは、と嫌な表情をした幽霊にしかし慧音は朗らかに笑って言った。

「だが、これを貴女が好きなのは、分かるな」
「私が、好き?」
「ああ。まやかしのような文言により、世界が広がるその心地。貴女がこれに心を預けたくなった理由が、私には分かる」
「それは……」

少女が海外の言葉を真似た文字はどれもこれも、ミミズがのたくった痕のよう。そこに再びの意味は見つけられず、ただ情熱ばかりが記されていた。
そこに幽かにでも共感をしてしまうのは、ひょっとして私にも同じようなものがあったからだろうかと、今更ながら魅魔は思う。
常に懐いていたからだろう。彼女のノートは汚く、捩れて、剥がれてもいた。そんなものをしかし慧音は何より大事にしている。
思わず魅魔はこう、言ってしまった。

「……本、読んであげようか?」
「それは、助かるが……えっと、いいの?」
「私だって、好きなものを独り占めしてられるほど、悪いお化けじゃなくってね」

そう、自分は怨めしいばかりの現実を忘れさせる嘘のような言葉たちが大好きだった。
そして、そんな自分の本心を理解させてくれたこの少女のことだって嫌いではない。
ましてや、こんなに冷たい自分の手を握り返してくれる相手を恋しく思わないなんて、あり得なくて。

「はは」

そんな、銀と青の愛のかたまりが魅魔の前で綻ぶ。
それが笑顔だと理解した魅魔は、次の言葉に大きく目を開くのだった。

「そうか、魅魔は優しいな」
「私が、優しい?」
「そんなの当たり前だろう? 悪いことを辞めて良いことを行う。それには、優しさがなくてはあり得ない」

違う。その一言が幽霊の喉からはどうしたって出てはくれなかった。あまりに、胸元が痛んでしまい。
魅魔は呪い傷つけ、殺めた。そんなどうしようもない過去を引きずり、死んでいたのだ。
ならば、この胸の高鳴りは、変わってしまった己は、何より少女の笑顔の柔らかさは。
それが自分に生まれた優しさに依るというのならば、それはどれほど喜ばしいものだろう。

「そう、か……ありがとう」

魅魔は生じてはじめて、生まれてきたことに感謝をしたのだった。

 

魅魔の膝に乗っかり本を読んでもらったその後、慧音は思い出したかのように、頭上のお化けさんに話しかける。
誰かさんのような柔らかな笑顔を浮かべたその人が悪霊と呼ばれていたとはとても思えないな、何が彼女をここまで変化させたのだろうと他人事のように考えつつ、少女は先まで書き込み続けていたノートを魅魔に差し出した。

「そうだな……貰ってばかりでは流石に悪い。私も対価として、このノートを差し出そう」
「……いいのかい?」

少女から、積み上げた知の形を取ってしまうこと。それは、学びによって生命を取り戻した幽霊である魅魔には、難しいことだった。
白魚のような指先は、迷いに上下する。見かねた少女の小さな指はその一本を掴む。
慧音は笑顔で言った。

「いや、構いはしない。むしろ対価になって私が夢見た魔法使いというものに近づけるなら、蓄えた知識たちも本望だろう」
「あー……それだけどさ」
「ん?」

あったかな、ふわふわ。そんな子供の指先に指を複雑に這わせながら、魅魔は少々口ごもる。
だが、ここで言わないのは決して優しくない。そう思ってしまえば、彼女の口も多少は軽くなった。

魅魔は、特殊な魔法の炎を握り込んでいない方の指先に灯して少女の眼の前まで動かし、問う。

「これ、見えるかい?」
「いや……何も」
「慧音。残念ながらあんたには魔法使いの才能は、ないよ」
「えっ」
「ぷっ」

驚きにぽかんとあいた口。きれいな桃色を見てとった魅魔は、笑うのを止められない。
頑張っても無理な、そんな才能は最早ゼロ。可哀想だけれども、そんなことより何よりこの子が可愛くって。

「あはは!」
「むぅ……」

その日、笑う幽霊の膝の上にてふくれっ面だった慧音は、夏中散々構われながらも結局その後も魔法というものを身につけること叶わなかったのだった。

そして過去から今。二人ぼっちから、また二人ぼっちに。
魔法の森の深きところ。後に魔理沙のものとなる館にて、話を聞いた彼女は小さなため息を吐いた。

「はぁ……慧音さんと魅魔様に、そんな馴れ初めがあったなんてなぁ……」
「まあ、あの子は本をそこらに置いときゃふらりと現れるんじゃないか、ってくらい本の虫だからねぇ。まあ、そうなったのも当然といっちゃ当然だよ」
「つまり、運命と同義か。いや、実は慧音さんが魔法てんで使えないなんて、知らなかったぜ……」

決して黄金ではないがそれでも立派な魔法使いの卵である魔理沙は、気持ちを複雑にする。
巫女として最高と言われたもう一人の親にも、苦手はあった。それは人である以上当然なのかもしれないが、しかし尊敬するものが完璧であって欲しいというのは好きの欲目で当たり前。
なんだかなぁ、と感じてしまう魔理沙に、この弟子は何言ってるのかと魅魔は告げる。

「いや、あの子は普段は使わないけれど、別に普通に簡単な魔法くらい使えるよ?」
「へ? ついさっき才能がゼロって言ってなかったか、魅魔様。とうとう、ボケちまったのか? ……痛っ!」
「はぁ。この娘は……」

また、げんこつが必要となってしまったことに、ため息一つ。
あの子と違って私は子育ての才能がないのかねぇと思いつつ、しかし実のところ霧雨家の両親に慧音公認の親代わりである魅魔は早々には諦めるつもりはない。
今度こそ痛みに自らの頭を両手で撫でる魔理沙に、魅魔は諭すように言った。

「才能はなくても、あの子には不断の努力があったからね。努力……ただそれだけで生きとし生けるものは前へと進めるが、あの子はとびきりだよ」
「へぇ……なら私も諦めなければ……」
「まあ、頑張ることだね」

諦めなければ、の続きは聞くつもりはない。何だかんだいい子である魔理沙とて間違えることなんてまああるだろうが、それでも願いばかりはきっと正しいだろうから。
魅魔に、少女たちの生命の輝きは眩しくもある。消えてしまいたくなるくらいにそれを感じるのは辛く、また嬉しいことで。
だから、幽霊は今更ながら優しくも生きることを肯定するのだった。

そして響いたごそりという音。何かと思って見た魅魔は、自分が渡すように言った件のノートを持った魔理沙が所在なさげにしている様子を目に入れる。
どうしたのか、という問いを放つ前に、彼女の耳に問いが届いた。

「なあ、魅魔様。そういやこの本……じゃなくてノート。どうして返しちまうんだ?」
「そりゃ簡単なことさ」

そう。それは簡単。風では捲れない程の経年劣化どころか幽霊の手垢も付いたボロのそれなんて、魅魔はとっくに見飽きていた。
でも、大切なものの大切を抱くのはとても嬉しくってこれまで大事に取っておいたけれども、魔理沙という新しい時代を受け入れてから気持ちは変わったのだ。

「私はもう見飽きたから、そろそろ続きを読みたくなったというだけよ」

そう、旧い作ではなく、新しい項を。
また会うためにという文句を隠し、悪霊だった人を愛する魂は、うふふと笑顔を作るのだった。


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