原作版・皆に攻略される百合さんのお話 第六話 オバケとお化け 「あれ?」「百合……」「どこか痛いの、百合ちゃん?」儚い水の軌跡がぽろぽろと。煌めきながら頬から流れて哀を描く。丸みを伝って落ちた雫は、少女の小さな手のひらの中で弾けて消えた。そう。百合が久しぶりに椿とふようと共に喫茶店でホットミルクを飲ん... 2023.12.21 原作版・皆に攻略される百合さんのお話
原作版・皆に攻略される百合さんのお話 第五話 攻略 日田百合は酷く身体が弱いが、存外風邪や流行性疾患に罹ることは少ない。それは普段、なったら下手したら命に響くからと手洗いうがいに衛生方面での頑張りを欠かさない故の結果であるが、とはいえ意外と風邪に悩まされがちの椿辺りにはうらやましがられたりも... 2023.12.21 原作版・皆に攻略される百合さんのお話
原作版・皆に攻略される百合さんのお話 第四話 無知 休日を楽しむことって、あたしにはちょっと難しいことだ。休みはアヤメと一緒に貯まった洗濯物やら外から始めるお掃除やらの家事に追われることでくたくたになってしまうあたしは、家事以外では本当に空いた時間を身体を休める時間に充てるだけ。特にどこかへ... 2023.12.20 原作版・皆に攻略される百合さんのお話
原作版・皆に攻略される百合さんのお話 第三話 痛み 淡色で町を飾った桜散り、緑ざわめく五月の頃。あたしは|西郡《にしこおり》高校からの帰り道をのんびり歩いていた。ほどほど辛い坂道を、えっちらおっちら。道中高低差のあるこの町を上から下から望んで、あたしは微笑む。春の装いだった町並みも、夏に向け... 2023.12.20 原作版・皆に攻略される百合さんのお話
原作版・皆に攻略される百合さんのお話 第二話 鬼々怪々 空が綺麗になるのが夜ならば、昼は世界が綺麗になる時間であると、あたしは思う。燦々と輝く一遍。何時もの光景を普通と人は言うけれど、それでもやっぱり皆が当たり前にあってくれることは嬉しい。それを、あたしは最近痛いくらいに思い知っているだけ、余計... 2023.12.19 原作版・皆に攻略される百合さんのお話
原作版・皆に攻略される百合さんのお話 第一話 バッドエンドの後に 愛に肢体は要らない。誰がそんなつまらないことを言い出したのだろう。心だけでは足りない。あたしは彼女の全てが好きだった。亜麻色の柔らかなその髪に、チョコレート色の肌がお似合いの、芳しき伽羅の少女。水野葵はそんな女の子だった。日向にあって誰にも... 2023.12.19 原作版・皆に攻略される百合さんのお話
原作版・皆に攻略される百合さんのお話 【原作小説】皆に攻略される百合さんのお話・目次 ゲームは主人公のバッドエンドで終わり。でも、残りの世界は終末に至れどもそう簡単には消え去らない。主人公水野葵に愛された日田百合は、末期に残ったヒロインたちにも愛されるけれどもそもそも彼女に残った時間すら希少。幽かな程の命で、彼女らはどんな花を咲かせるのだろうか。 2023.12.19 原作版・皆に攻略される百合さんのお話
口が裂けてもいえないことば 後書き ハッピーエンド ピリオドを決めつけられた、暗褐色の世界。ゴミ捨て場とはそういうもので、私はもう殆どこれに等しい。終わっていて、もう直ぐに消え去る。死とはそんなものであり、こんなものばかりを私を好んでくれたもの達に与え続けてきたことは慚愧に堪えないことだ。こ... 2023.11.30 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 蛇足 牛の首 さて、以降は蛇足でつまりこれから述べる【私】とは何かという話に意味はない。そもそもアイアムアイに自信がなければ【私】と世界にはそれほど差異がないといったのは正直なところ。だが【私】こと|千里件《せんりくだん》はそもそも未来を知りこの世を語る... 2023.11.29 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば エピローグ 口が裂けてもいえないことば 「が、あああぁああっ!」「あれ、うるさいよ?」静寂は切創により死ぬ。少女の開いた口からおおよそ人の発するものではないような悲鳴が轟く中、罪悪滔天。切り裂きジャックのお姉さんは、慈悲もなくただ当たり前のように両足を失った華子の口元へ小ぶりのハ... 2023.11.29 口が裂けてもいえないことば