美鈴おかーさん 第一話 おかーさん? 布団の代わりに柔らかに繁茂した草。天井代わりに天の川に星々を散らす天上。木の根に横たえた顔の隣で跳ねた、バッタに笑う。 これは家なき子の、野宿。けれども、野を家とするのは、別に苦痛ではないと、紅美鈴は思う。 「何しろ、昔はこんなのばかりだっ... 2024.03.03 美鈴おかーさん
美鈴おかーさん 美鈴おかーさん・目次 東方Projectの紅美鈴さんが主役の二次創作小説です。 妖怪の彼女が人と妖怪の間を行ったり来たりしながら母のごとくに少女らの心を和ましていく小説となります。 日向に安堵する妖怪、闇を知る人の子。白と黒は果たしてどちらに。 2024.03.03 美鈴おかーさん
マイナスから目指すトップアイドル 第三十話 逃げ出してはいけない ドームのゲスト室から望めるのは、空きを埋め尽くす夥しいまでの人の数。 五万を超える人波がうねるように一人を求めるその様は、まるで蜘蛛の糸のお話に出てくる地獄をすら想起できる。 そして、実際彼らはアイドル鹿子という少女一人に天国を覚えている者... 2024.03.01 マイナスから目指すトップアイドル
マイナスから目指すトップアイドル 第二十九話 悪役令嬢 譜を音にする。 それだけの慣れ親しんだ行為がこんなに緊張するとは思わなかったと、オーキッドプロダクションの若き編曲家、類村慎樹は三つ色で染めた短髪を指先で掻きながらそう述べた。 素直に音楽に仕立て上げる、それだけの本来そう過つことのないはず... 2024.02.29 マイナスから目指すトップアイドル
マイナスから目指すトップアイドル 第二十八話 ハーモニー 片桐朝茶子という少女は人界にあってしまった天国である。 そして、町田百合は人界に溢れ出ぬよう地獄を抑える蓋だった。 『そういえば結局、あの音楽家さん? あたし達の曲書いてくれなかったねー。どうしてだろ?』 「はっ、そりゃ心壊れた後に他人のこ... 2024.02.29 マイナスから目指すトップアイドル
マイナスから目指すトップアイドル 第二十七話 片桐朝茶子 この世に太陽が一つしかないというのは常識ではあるが、それは果たして何故だろうか。 生命が育まれるに丁度いいのがこの奇跡の恒星一強の環境であるが故に、大星は複数に並ばない。 だが、並べてそれと喩えてカシマレイコを太陽と呼んでいるばかりのアイド... 2024.02.28 マイナスから目指すトップアイドル
マイナスから目指すトップアイドル 第二十六話 地獄じゃない 七坂愛はこれまで姉という人を今ひとつ知らなかった。 なにせ、姉だという舞は自分のことをよく見てくれないし、直ぐお父さんお母さんと口喧嘩を始めるし、何よりお家に帰ってくることすら希なのである。 また寒そうな服に強い匂いを纏う目つきの悪いお姉ち... 2024.02.28 マイナスから目指すトップアイドル
マイナスから目指すトップアイドル 第二十五話 星は星を知らない さき。それは、町田百合の数少ない友人、遠野咲希のアイドル名である。 名称のひらがな二文字で可愛さを全力アピールしているつもりの彼女は、2メートルにすら迫らん程の成長を見せる物理的大型新人。 彼女はアイドルって何だっけ、という程凄まじい身体能... 2024.02.26 マイナスから目指すトップアイドル
マイナスから目指すトップアイドル 第二十四話 綺麗なものを壊すのが アイドル四天王というものが出来たのは、カシマレイコという天上に付き添うように高度化した少女たちをただのアイドルたちと纏めるのが不可能になった群集の心理に拠って撚られたためとされる。 だがそんな緊急退避的な称号が今や四様の篩のよう。彼女らの何... 2024.02.26 マイナスから目指すトップアイドル
それでも私は走る 悲鳴をすら 「……美味しいです」 一人蕎麦屋のカウンター席に座して、一口いただいて直ぐにそう零したのは碧い目をした栗毛のウマ娘。 主人が少女のためにとせいろ蕎麦たっぷりと盛りに盛ったは十人前。だが、彼女にとってそれは腹八分目に収められる程度でしかないの... 2024.02.25 それでも私は走る