オリジナル小説

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原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第十三話 デッドライン

あたしにとって、月野椿という女の子は、憧れに近いものであったのかもしれない。 とても綺麗でお金持ちで健康で、そして何より色々大っきい。とても高いところから、彼女はあたしを見下ろしていたのだ。 人を踏んづけて、幸せになる。対象があたしであるこ...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第十二話 魔法使いの少女

「はぁ……」 砂時計は逆さにすれば再び動き出すけれど、零れた水は戻らない。そんなこんなを、時間と共にぽろぽろ落ちてく命を参考に改めて理解しながら、あたしは秋晴れの下に曇った心を抱えて歩く。 指先一つ動かすのもおっくうな身体を、未だ死体でない...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第十一話 蛇足、或いは遺言

柔らかに、風が草を撫でる音がする。そして、そんな音色を気にも留めずに歩を進めるざわめきも。そこで、遅ればせながらあたしは気配を察する。 あたしたちの会話の隣で人が居た。そのことに、今更気付いてあたしはそちらへと振り向く。 エノコログサの傾ぎ...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第十話 奇跡

暑気をまだまだ感じる秋の候。でも風は涼しくなってきたなと思いながら、あたしはお昼休みに校庭をぶらぶら。浮けない程度の軽い身で色んなものをのぞき見た。 猫の足跡、忘れられたラインカー、お空を覆ういわし雲。どれもこれもが面白くって、あたしの中に...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第九話 尊重

『この芸人さん、本当に美味しそうに食べるねえ。ボク、彼のこと気に入っちゃった!』 「紫陽花ちゃんって、食べ歩き番組観るの好きだねー」 『そういえば……何時も一緒に観てくれてるけど百合ちゃんはこういうの観ててつまらないとか、そんなことはないの...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第八話 間違ってる

お庭のなすびがぱんぱんに張ってきた今日この頃。日差しの強さよりも空気の暑さの方が気になる時節に、珍しくもあたしは外出をしていた。 青空には、随分と成長した入道雲が遙か遠くに。何に遮られることもなくぎらぎらと輝く太陽が、あたしを容赦なく攻め立...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第七話 傷

「そろりそろり……」 『すいすいー』 妹に黙って幽霊を家に入れるという隠し事のために、百合は抜き足差し足忍び足。まとまりきらない薄色の髪の毛がそれに合わせて上下する。 軽いその身をそろりとすれば、床に音など立ちはしない。綿のような総身をつま...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第六話 オバケとお化け

「あれ?」 「百合……」 「どこか痛いの、百合ちゃん?」 儚い水の軌跡がぽろぽろと。煌めきながら頬から流れて哀を描く。丸みを伝って落ちた雫は、少女の小さな手のひらの中で弾けて消えた。 そう。百合が久しぶりに椿とふようと共に喫茶店でホットミル...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第五話 攻略

日田百合は酷く身体が弱いが、存外風邪や流行性疾患に罹ることは少ない。 それは普段、なったら下手したら命に響くからと手洗いうがいに衛生方面での頑張りを欠かさない故の結果であるが、とはいえ意外と風邪に悩まされがちの椿辺りにはうらやましがられたり...
原作版・皆に攻略される百合さんのお話

第四話 無知

休日を楽しむことって、あたしにはちょっと難しいことだ。 休みはアヤメと一緒に貯まった洗濯物やら外から始めるお掃除やらの家事に追われることでくたくたになってしまうあたしは、家事以外では本当に空いた時間を身体を休める時間に充てるだけ。 特にどこ...
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