それでも私は走る

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それでも私は走る

走るのが好きだ

「はぁ……はぁ」走るのが好きだ。そんな想いの発端がウマ娘を走るに賭けさせた。――――という少女も、それは同じ。だからこそ、彼女は走る。「たの、しい!」生きるのは急ぐことではなく、一歩一歩を踏みしめて確かに進むことであるのかもしれない。でも、...
それでも私は走る

水無月の空に啼いた

――――がここのところ空元気でずっといることなんて、エルコンドルパサーは当然気付いていた。存外彼女は役者であるようだけれども、しかしエルコンドルパサーとて仮面を被る者である。一枚の奥の少々臆病な内心から覗いてみると――――の笑顔は以前と比べ...
それでも私は走る

こんなに幸せ

ウマ娘達がその速さを競うということは、人が薄氷を渡ることと似ているのかもしれないと、彼は思った。そもそも遅ければ氷の下に堕ちてしまうだろうし、そしてほんのちょっと力を入れすぎただけで氷は脆くも砕け散って足を取られてしまう。最悪没した先に適切...
それでも私は走る

悲鳴をすら

「……美味しいです」一人蕎麦屋のカウンター席に座して、一口いただいて直ぐにそう零したのは碧い目をした栗毛のウマ娘。主人が少女のためにとせいろ蕎麦たっぷりと盛りに盛ったは十人前。だが、彼女にとってそれは腹八分目に収められる程度でしかないのだか...
それでも私は走る

それでも、私は走る

「全治、二ヶ月か……何、してようかな」若葉色の一重の患者着に身を包みながら、少女は先に聞いた医者の言葉を繰り返す。随分と長く気絶していたらしい合間にがっしりと巻かれたギプスを装置で釣り上げられた、そんな身動きろくに取れない大げさな眼前の光景...
それでも私は走る

何を愛したら

皐月賞のその日、サイレンススズカはトレーナー、そしてチームの皆に連れられて応援に来ていた。あまりの歓声に一時耳を畳みながら、彼女は彼女を思う。その応援相手は当然我らがチームスピカにおける新星、スペシャルウィーク。奇しくも同室の、輝かんばかり...
それでも私は走る

おはよう

開始記号はさり気なく。歓声に紛れた合図。それを敏に察せたのは、誰よりそれを待ち望んでいたからか。連符の付いた彼女の耳は、響きを感じて全身を発奮させる。「っ!」つまり開いたゲートをドンピシャで察した――――。青の空の下、踏み出した彼女の一歩が...
それでも私は走る

貴女には私が

最も速い。それは、多くの競走者が望む称号。心より一番を望むなら、決して避けてはいけない夢。しかし距離の適性に調子や年齢、そしてウマソウルの加護の度合い等、一律に速さというものを決めるのは中々に難しいことである。だが、クラシックには最も速い馬...
それでも私は走る

命をかける価値

可愛らしいものは、大なり小なり好かれるもの。だからウマ娘全体が愛らしい見目、整った顔に心をしているのは、きっと偶然ではない。種族特性ともされる優しさや美しさは、端から彼女らが愛されるべきであると神が丹念に捏ね創ったからではないか。そうまで言...
それでも私は走る

勝利は彼女のもの

レースにおいて一位でなければそれは敗北と同義。手と手を繋いでゴールなんていうお遊戯のようなことは出来ない真剣だからこそ、勝敗には強い意味合いが出るものだ。とはいえ、別段上位に価値がないという訳でもない。重賞で十着、そうでなくても八着以内にま...
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