口が裂けてもいえないことば 第十三話 この物語はフィクションであり、実在の人物や団体とは一切関係ありません 高橋七恵は、赤マントに見出された歪みである。おぞましき愛の赤に染められて人でなしになってしまった、最早心が無機物に近い噂の乙女だ。「くっつかないわ」そして、その無感動な心は身体も同じく血の通わぬものにさせた。硬く、脆く、それこそ硝子のような... 2023.11.28 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第十二話 真っ二つ 物語るばかりの道化が踊った黄昏時に、吉田美袋という少女は死んだ。彼女はやがて嘘みたいに残虐な切り裂きジャックと成り果てる。そして、明津清太という人間はそもそも嘘だった。薄っぺらの設定、人でなしがこの世に貼り付けた物語は暴かれ赤マントという怪... 2023.11.27 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第十一話 笑み 少女の日暮れにブザーは鳴らない。むしろ、闇こそが価値で、見えないことにこそ意味がある。そう、足立華子には、よく分からないものこそその奥に何かがあるかと思えて願わしいものだった。だからこそ、異世界とすら言えるくらいの違った魔物の世界、ゴミ捨て... 2023.11.27 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第十話 青年の死/赤マントの登場 血はぽたりぽたりと垂れ落ちる。あまねく全ては重力に頭を垂れるものとはいえ、それは酷く粘って抵抗し、ようやく肉からはがれ落ちるものだった。終わった一般家庭の一つ屋根の下、男の子を女の子が刺し貫く、そんな非情が夜に溶けていく。怪人が人を殺めるな... 2023.11.26 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第九話 禁句 喜悦に富んだ人生などそうはない。或いは空をも飛べずに泥を味わい、やがて己の不幸を感じなくなるまでが普遍であるかも知れなかった。こと明津清太は、空を飛ぶトクベツ達に地べたを這いずる自分の足では追いつけないことに未だ慣れない不幸な青年である。今... 2023.11.26 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第八話 手を握る 吉田美袋が物心ついてからはじめて切ったものは、折り紙だった。赤い紙をぶきっちょに真っ二つ。切れ味の悪いハサミを右に左とさせながら切り裂いたそれの出来上がりは見事に歪んでいた。これは先に保育園で先生が行っていたほど綺麗な切断面ではない。でも、... 2023.11.24 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第七話 ばれちゃった 夕焼けに独りぼっちの影法師長く、地べたをなめる。愉快げに蠢くその黒は、そのうちに街灯に紛れて消えるだろう。だが、黄昏。色の階調の表現だけで手元のパレットを使い切ってしまいそうな、そんな空の多色の揺らめきの中、少女は微笑む。まるで嘘のような、... 2023.11.24 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第六話 零点満点 学生が学ぶのは正しいことである。そして、少年少女が愛されることは当然至極、望ましい。ならば、足立華子という少女は優等である。彼女は小学校を学ぶだけの場所として通い続け、今はなき兄の分も過保護にも両親に愛された。しかし、正解ばかりを続けるのが... 2023.11.23 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第五話 ちょんぎる 「清太君、次はこっちー。この、あばれるもんがーを取ってみない?」「もんがー? いや、うん。このぬいぐるみが何かかはよく分からないけれど、美袋が欲しいのっていうのは分かったよ。……よし」騒々しい機械がクレジットを求めて光り輝く、そんな遊び場。... 2023.11.23 口が裂けてもいえないことば
口が裂けてもいえないことば 第四話 後悔 「はぁ……今日も、僕は僕だな……」そんな言葉は吐息とともに、眼前の鏡を曇らせた。鏡面に映ったくせ毛の少年は、ま白い顔を憂いに染めたままに己を見つめている。過去と今が本当に繋がっているのか、そう不安になるときが|明津《あかつ》|清太《せいた》... 2023.11.22 口が裂けてもいえないことば